2024年独立リーグ球速ランキング 〜IPBLデータレポート(4月29日週号)
独立リーググランドチャンピオンシップの開催地が決定
今回は2024年5月時点での「球速ランキング」を紹介しますが、まずはお知らせから。
今年の独立リーグ日本一を決めるグランドチャンピオンシップの開催日時が9月27~29日、開催地が栃木県に決まりました。
今年はぜひ秋の栃木へ。早速、カレンダーに予定を登録していただければと思います。
今年のIPBL各リーグ所属チーム一覧は次の記事をご覧ください。
昨年は椎葉剛(阪神)と大谷輝龍(ロッテ)の登板も見られたグランドチャンピオンシップ。10月のNPBのドラフト会議で指名される選手が多く出場する大会としても注目度が高まっています。
さて、今年はどのような選手、チームが各リーグを勝ち上がり、栃木決戦に臨むのか。ドラフトへ向けて最もわかりやすく、注目されやすいのは「球の速い投手」でもあるので、今回はまず球速のデータから今年の注目投手をピックアップしたいと思います。
ルートインBCリーグからもお知らせが出ている通り、2024年からスポナビの一球速報でBCリーグ(BCL)の試合が速報されています。2023年から四国アイランドリーグplus(IBLJ)の試合も速報されていましたが、今年は2リーグでスポナビ速報時のデータが取得できています。
IPBLに所属するヤマエグループ九州アジアリーグ、北海道フロンティアリーグ、日本海リーグは今回は入っていませんが、日本の独立リーグの中でも歴史の長いIBLJとBCLに関する投手の球速ランキングを紹介します。
※記事執筆前提となるリーグでの自分の役割は、次の記事をご覧ください。今年はIPBL(日本独立リーグ野球機構)全体のデータ活用もみているため、タイトルを昨年度から変更しています。
IBLJ、BCLの球速ランキング 〜part 1〜
IBLJはソフトバンクと、BCLは巨人、西武、ソフトバンクとの一部の試合が公式戦扱いになるので、NPB各球団の選手のデータも一部入っています。
ランキングでまず目につくのは愛媛MPで抑えを務めている羽野紀希。昨年もドラフト候補に挙げられていましたが、今年はストレートがさらにスピードアップし、松山の坊っちゃんスタジアムで157キロをマークしました。
それだけでなく今治市営球場でも154キロをマークするなど、スピードボールが目立っています。
・羽野紀希(愛媛MP)の投球:坊っちゃんスタジアム
・羽野紀希(愛媛MP)の投球:今治市営球場
羽野に続くのは徳島ISの工藤泰成。NPBの選手を除くと平均球速も2位で、昨年は6人がドラフトで指名された徳島ISの今年の再注目投手です。
・工藤泰成(徳島IS)の投球
IBLJ、BCLの球速ランキング 〜part 2〜
続いてpart 2。part 1に登場した投手はすべて右腕でしたが、この表には左腕が登場します。左腕で最も速いのは徳島ISの池戸昇太。IBLJで最優秀防御率のタイトルを獲得した昨年に比べても平均球速が上がっており注目です。
BCLでは信濃GSの山田夢大と神奈川FDの安里海という2人の新入団選手が左投手の球速上位にランクインしています。
IBLJ、BCLの球速ランキング 〜part 3〜
part 3の最速140キロ台前半のリストには意外とNPBの投手が多くランクインしています。
もちろん彼らからすると3軍戦でわずか数球投げただけの数字ですが、IBLJやBCLの投手からすれば貴重な情報で、似たレベルの投手との違いがどこにあるのかを確認する目安となりそうです。
IBLJ、BCLの球速ランキング 〜part 4〜
最後にpart 4を紹介します。最も遅い群馬DPの根本夏珠葵と香川OGの青山武樹はアンダースローの投手です。
このリストにはかつてNPBの一軍でも活躍した栃木GBの吉川光夫、神奈川FDの高木勇人、栃木GBの成瀬善久という名前も見ることが出来ます。
昨年のグランドチャンピオンシップでは決勝の最終回で当時埼玉武蔵HBの清田育宏と火の国の山口翔の真っ向勝負が見られるなど、独立リーグは元NPBの選手の生き様を肌で感じられる場でもあり、栃木開催の今年はどのような投手が決戦の場に登場するか楽しみです。
試合での球速は「重要」な「参考値」
以上、5月3日終了時点でのIBLJ、BCLの球速ランキングを紹介しました。
球速はわかりやすい数値ですが、下記にあるように球場の計測機器次第で大きく変わる数値でもあります。
また、スポナビの速報では各球場でスタッフが速報値を入力するわけですが、計測機器や機器の設置場所は様々であり、下記にあるように球場ごとに球速の計測率も異なっています。
本格的な比較には、昨年の春先に下記で行っていたような球場内での比較など、条件を合わせる必要があります。
ただし、リーグのレベルを見る上で球速が重要な指標のひとつであることは間違いなく、今年からマイナーリーグの元データを公開している米国の数値を見ても、リーグのクラスごとに少しずつ数値に差が出ています。
米国では測定にStatcastが導入されている点やマウンドの固さに日本との違いがあることを考えると、坊っちゃんスタジアムのようなマウンドの固さが調整されており、かつ画像解析型の球速計測機器の球場を除くと、日本の多くの地方球場の計測値はこの数値より2~3キロ程度遅いと思われます。
この意味でも、坊っちゃんスタジアム以外でも150キロ台中盤をマークしている羽野はより高いレベルで試してほしい状態であり、ストレートの速さだけでは通用しないレベルの打者と多く対戦する機会が作れると良いと感じています。
より高いレベルで活躍するため、まずは各投手が自身の球速の相対的な位置を認識し、球質やその他の要素を高める必要性を体感する経験をどうできるか。リーグとしても選手がそのプロセスを主体的に踏めるための仕組み作りを試行錯誤していきます。