『社会科』が好きじゃないのではなかった。ただ、暗記するのが苦手なだけだった。
小学生の時から、「得意科目は算数です」と言っていたほど、根っからの理系人間である。
社会科は苦手で、テストの点も、他の教科に比べると、悪かった。
中学の時は、年号などを覚えられなくて、塾の先生に怒られて泣いた。
高校の時は、テスト期間中はほとんどを世界史の勉強にあてたが、欠点ギリギリ。
最低限の勉強しかしなかった数学は、そこそこいい点を取って、複雑な気持ちになった。
ずっと社会科は苦手だと思っていた。
社会科の勉強はしたくないと思っていた。
大学を卒業し、働き出して知ったことは、自分の選んだ仕事が、中学の社会科でいう『公民』の分野に深く関わるものだということ。
仕事を選んだときには、そうとは知らなかった。
仕事を始めると同時に、その仕事に関わる知識の勉強を始めた。
勉強してみると、社会の仕組みがだんだんとわかってくる。
その内容に対して、面白いということはないけれど、なるほどとなるし、だからこうなるのか、と分かることは面白い。
そして、「もっとこうすれば、うまくいくのでは」と、社会の仕組みを考えるようになる。
そして気付いたことは、中学の時、社会科が苦手で自分には無理と思っていたけれど、苦手で無理なのは、その内容ではなくて、覚えることなんだということ。
暗記が苦手だという自覚は前からあって、特に固有名詞が覚えられない。
だから、覚える努力をしようとも思えない。
(覚えようとしないから覚えられないともいえる。)
人名、地名、年号が覚えられないから、歴史は特に苦手だった。
数学も得意ではあるが、公式は最低限のものしか覚えていなくて、毎回、公式を導き出すところから解き始めている。
社会科のその内容が好きではないのではないと言えるもう一つのエピソードがある。
『そこまで言って委員会』という番組がある。
小中学生のとき、割と真剣に見ていた。
毎週、テーマに関するVTRが流れ、それに対して委員会メンバー(パネリスト)が意見を述べる。
委員会メンバーは様々なバックグラウンドがあり、様々な視点から意見が出る。
極端な意見が出ることもあるし、反論に反論が重ねられることもある。
結論を出すのではなく、とにかく言いたいことを言いまくる番組である。
テーマは、政治、国際問題、社会問題などである。
この番組を見ながら、「自分はこう思う」と、委員会メンバーのように、自分の意見を持っていた。
自分と同じ意見が委員会メンバーから出ないこともあったが、自分とは違う視点からの意見や、反対の意見、極端な意見でも、「そんな考え方があるのか」と、自分の視野が広がることを面白く感じていた。
中学の『社会科』は苦手だったが、『社会』に対しては、それなりに興味があって、自分の意見を持っていたのである。
暗記するのは苦手。
考えるのは好き。
内容は、あまり関係ない。
これが、私の特性であるということに気付いた。