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岡本太郎【明日の神話】と TARO MONEY

年賀状もそうだが、もう交流のない方の手紙などは、こちらがいつまでも相手の個人情報を所持しているのも悪い気がするので処分してしまう。

十数年前の手紙で一通だけ、とってあった手紙がある。捨てなかった理由は、中に小さなプレゼントが入っていたからだ。

それは「TARO MONEY」だった。

TARO MONEY


手紙には (ほぼ日刊イトイ新聞参照) とだけ書かれていた。
その当時はガラケーだったし、なんでも気軽に検索🔎という習慣がなかったので、TARO MONEY が何だかよくわからないまま放置していた。

つい最近になって、きっかけはよくわからないがやっとこの TARO MONEY が何なのかを調べてみた。

「お金」みたいに見えるものをつくりました。
贋金作りをするつもりはないんです。
岡本太郎の顔と『太陽の塔』『午後の日』の絵が入った
ちいさなコインをつくりました。
利益はすべて『明日の神話』再生に役立てます。
コインには通貨単位の、TAROが刻まれています。
ほんとうの貨幣ではありませんが、
人に親切にされたときとか、誰かに拍手したいとき、
このTAROコインをプレゼントする。
そういう使い方ができるかな、と思っています。

ほぼ日刊イトイ新聞



なんとなく半分は理解できたが、後の半分がわからない。このコインの購入代金が寄付になる。そしてこのコインは誰かにプレゼントしようということのようだ。『明日の神話』再生とは?

そこで今度は『明日の神話』を調べる。

2003年秋、長らく行方がわからなくなっていた岡本太郎作の巨大壁画『明日の神話』がメキシコシティ郊外で発見されました。

岡本太郎記念館サイト

本作『明日の神話』は、1968年のメキシコオリンピックのためにメキシコシティ中心部に建築中だった、当時ラテンアメリカ一の規模の44階建てホテルのために製作されたものである。

『太陽の塔』と同時制作で、太郎は何度もメキシコに赴き制作した。約30回現地を訪れたとされる。

1969年9月に『明日の神話』壁画が完成し、サインを入れて依頼主に正式に引き渡すのだけの状態であったが、ホテルが完成せず連絡が途絶え、そのうち壁画は行方不明となっていた。1970年前後にホテルの運営会社が倒産したのである。

ウィキペディア


2003年、メキシコシティ郊外の資材置き場にひっそりと保管されていた壁画を岡本敏子が確認する。

2004年、(財)岡本太郎記念現代芸術振興財団内に再生プロジェクト事務局が発足。壁画の移送・修復に向けた取り組みが本格的に始動する。

2005年、壁画を日本へ移送。修復がはじまる。

2006年6月、修復が完了。

同年7月、汐留にて初めて一般公開。
50日間という短期間の中で述べ200万人の入場者が集まる。

2007年4月〜2008年6月、東京都現代美術館にて公開。

2008年3月、渋谷に恒久設置することが決定。
11月18日より渋谷マークシティー連絡通路内にて公開が始まる。

このような経緯であった。(岡本太郎記念館サイトより)

私は一応アートに関心はある方だが、この話を全く知らなかった。

『明日の神話』とはどういう絵なのだろうか。

『明日の神話』は原爆の炸裂する瞬間を描いた、岡本太郎の最大、最高の傑作である。
猛烈な破壊力を持つ凶悪なきのこ雲はむくむくと増殖し、その下で骸骨が燃えあがっている。悲惨な残酷な瞬間。
……
だがこれはいわゆる原爆図のように、ただ惨めな、酷い、被害者の絵ではない。
……
あの凶々しい破壊の力が炸裂した瞬間に、それと拮抗する激しさ、力強さで人間の誇り、純粋な憤りが燃えあがる。
タイトル『明日の神話』は象徴的だ。
その瞬間は、死と、破壊と、不毛だけをまき散らしたのではない。残酷な悲劇を内包しながら、その瞬間、誇らかに『明日の神話』が生まれるのだ。

『明日の神話』によせて/岡本敏子のメッセージ
岡本太郎記念館サイト





今日は、お彼岸のお墓参りに行った。



そして帰りの乗り換え駅である渋谷駅で、岡本太郎の『明日の神話』を見た。



タイトルプレートに反射する渋谷駅の風景や行き交う人々もこの作品世界から連なる同じ時間軸にいるようだ


一人の人間が、ひとりの芸術家が、このような仕事をなし得ることにただただ圧倒される。


田園都市線と井の頭線の乗り換えで向かう通路を、ほんの少し逆に歩くだけでこの絵はあった。
でも普段は、ほんの少しでも逆に歩くことはないので、この絵のことはずっと知らないままだった。

十数年のタイムカプセルを開けて、『明日の神話』へと私を導いてくれた TARO MONEY 。

このプレゼントをくれた彼女は、渋谷駅からは距離のある県に住んでいるけれど、もうこの絵を見ただろうか。




そして、これから他にも、どんな人生の伏線回収が私を待っているのだろうか。




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