優しかったあの人を思い出しました
窓の外が何やら賑やかな色合いでしたので、
つま先を立てて覗きこんでみましたら、
もうすっかり真っ赤に染まり終えました空と、
地平線のあちら側に帰りかけている黄金の太陽と、
頭を何度も下げながら暫しの別れを惜しむ草や花たちが、
まるで最期のお別れのように互いに手を振りあっておりまして
そうしたお終いのような風景を
夜の迎い星たちがこぞって集まり
濃い青色の空の
そのとっても高いてっぺんから見下ろしておりました
僕は、優しかったあの人を思い出しました
(フォトエッセイ集・コールタールの電燈
「優しかったあの人を思い出しました」より)
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