この世界のはじまりの終わり
まだこの星に
何もなかった世界のはじまりに
鳥と蝶と虫が現れ
荒れた地にタネを敷き詰めた
敷き詰め終えると
四つの季節が天の風に乗って現れ
光と水をタネに注ぎ
森を七色に染めた
それから幾億年もの月日が経ち
タネは木に草に花に姿を変えた
その日から
森は世界のはじまりになった
そしてある日
灰色の服をまとった人間が現れ
木の一切を切り倒し
草の一切を刈り上げ
花の一切をむしり取り
森をコンクリートで覆い隠した
すると森は
あっという間に灰色の街に姿を変えた
こうして
世界の始まりを知らない灰色の手は
幾億年月かけて造られて来た森を終わらせ
世界の終わりのはじまりを招いた
それらは
一瞬の出来事だった
(フォトエッセイ集・コールタールの電燈
「世界のはじまりの終わり」より)
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