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ネムラの森

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30年にわたって書き続けている短編ファンタジー小説「ネムラの森」。シュウとクロルそしてフェアローゼが深く不思議な森の中で繰り広げる壮大なドラマです。その一部を少しづつご紹介してい…
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#憧憬

ティギーおばさんが暮らす家

ティギーおばさんが暮らす家

ごらん、想像力は世界を創る

黒いタキシードをまとい 蛍の灯りで森の入口を照らす蟻 銀のマントを風になびかせる 誇らしげな猫 バイオリンは弾けないけど とても働き者のキリギリス 餅つきのバイトに精を出す 満月のウサギ 恋にやぶれ目を真っ赤に 泣き腫らした蠍座の蠍 後ろにしか歩けない 不器用なフンコロガシ 双眼鏡片手に器用に髪を切る 床屋勤めのカニ 住宅ローンが嫌いで 生涯間借りを貫くヤドカリ キツツキが恋人たちのために 夜空に開けた満天の星 世界中の音符をかき集め 母と子に奏で届ける

コールタールの電灯

どこまでも長く 深く それは とても大きな夜でした 闇の召使い共は 黒炭のジュウタンを 所狭しと敷き詰め 音は 静かに しかし 鋭く尖っていました。 「モシモシ、ドウナサレマシタ?」 顔色が冴えないコールタールの電灯が 長い影で覆われた私しの疲れた顔を 深く覗き込むように そして優しすぎる程に スーッと 声を投げかけてきました 「オ母サンハドコニイマスカ」 「ハテハテ、可笑シナコトヲ聞クカタダ。 アナタノオ母上ノコトナド、知ルヨシモナイ」 笑う電灯の回りを