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ネムラの森

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30年にわたって書き続けている短編ファンタジー小説「ネムラの森」。シュウとクロルそしてフェアローゼが深く不思議な森の中で繰り広げる壮大なドラマです。その一部を少しづつご紹介してい…
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2020年5月の記事一覧

星がキレイな夜でした

「きぃん」と星が流れてゆきました。 そのもっと上の方で別の星々たちが その星のゆく先を眺めていました 僕は電車の窓から顔を出し その星とその星を眺める星々たちを 見上げました。 星がキレイな夜でした

ハシゴを伝って降りて来た星(ネムラの森)

「フェアローゼ、今日はとても暑かったから  多分いつもより早く星たちがハシゴを伝って降りてくる筈だよ」 「じゃぁ丘の上に見にいってもいい?」 「あぁ、パパも一緒に行くよ、  星が街の灯りになるのを久しぶりに見たいからね」 余談ですが、本編にはこの話の続きがあります。 丘の上でフェアローゼは部屋の奥から持って来た虫捕り網でハシゴを伝って降りてくる星を一つ捕まえようとします。しかし中々捕まりません。やがて足下の青草たちに助けてもらいやっとの思いで星を一つ捕まえると、自

ネムラの森(我が家)

ここには カフェも タクシーも ツタヤも 映画館も ないけれど 眠れない夜に拾い集めてきた星々の欠片と ひとり寝の夜に窓辺で奏でる風の子守唄と フクロウが読み語る終わりのない物語と 香り深い挽きたての珈琲がある そして ソファに深く腰を落とし 静かに独り時を刻む ボクがいる

ティギーおばさんが暮らす家

ティギーおばさんが暮らす家

ごらん、想像力は世界を創る

黒いタキシードをまとい 蛍の灯りで森の入口を照らす蟻 銀のマントを風になびかせる 誇らしげな猫 バイオリンは弾けないけど とても働き者のキリギリス 餅つきのバイトに精を出す 満月のウサギ 恋にやぶれ目を真っ赤に 泣き腫らした蠍座の蠍 後ろにしか歩けない 不器用なフンコロガシ 双眼鏡片手に器用に髪を切る 床屋勤めのカニ 住宅ローンが嫌いで 生涯間借りを貫くヤドカリ キツツキが恋人たちのために 夜空に開けた満天の星 世界中の音符をかき集め 母と子に奏で届ける

コールタールの電灯

どこまでも長く 深く それは とても大きな夜でした 闇の召使い共は 黒炭のジュウタンを 所狭しと敷き詰め 音は 静かに しかし 鋭く尖っていました。 「モシモシ、ドウナサレマシタ?」 顔色が冴えないコールタールの電灯が 長い影で覆われた私しの疲れた顔を 深く覗き込むように そして優しすぎる程に スーッと 声を投げかけてきました 「オ母サンハドコニイマスカ」 「ハテハテ、可笑シナコトヲ聞クカタダ。 アナタノオ母上ノコトナド、知ルヨシモナイ」 笑う電灯の回りを

未来都市の繪

子どもの頃、未来都市の絵を描いた あの時、 どうして森や樹や花や虫を描かなかったんだろう