ゴードンとムスメの話
これは1990年代中頃の話。
当時幼稚園児だった僕は周りの子供たちと同じように「きかんしゃトーマス」が好きだった。
きかんしゃトーマスは1984年にイギリスで放映が始まった子供向け番組で、1990年より日本でも放映が始まった。当初は幼児向け番組「ひらけ!ポンキッキ」の1コーナーに過ぎない扱いであったが、フジテレビ⇛テレビ東京⇛NHK Eテレと放送局を変えながらも続いている長寿コンテンツの一つである。
放送当初は鉄道模型を使った人形劇スタイルの番組であったが、2010年より3DCGを用いたアニメーションスタイルに変化を遂げている。
そんなトーマスだが、2021年(日本では2022年)から始まったシーズン25より大きくスタイルを変え、2Dアニメでの放送となっている。
これまでは、どちらかというとキモカワ寄りの見た目であったが、今は時代に合わせて正統派のカワイイアニメへと変貌している。
また多様性を意識しているのか、世界各国出身の車両が多く登場しているのも特徴的である。日本出身のカナ、ケンジ、ヒロなんて車両もいたりする。
スタイルを変えながら、時代に合わせながら、今でも子供たちの人気を得ており、トイザらスなんかに行くと未だにトーマスコーナーがあったりしている。
ここから話を90年代にもどす。
前述の通り、幼稚園児だった僕は「きかんしゃトーマス」が好きだった。その当時「きかんしゃトーマス」のおもちゃと言えばプラレールが定番で、僕もプラレールが欲しくて欲しくて仕方なかった。
そんな僕は誕生日のプレゼントでトーマス(主役)のプラレールを父にリクエストした。
僕はドキドキしながら数日待った。
「僕のお家にトーマスのプラレールが来るんだ。」
「家中を走らせて遊ぼう。」
そんなことを思いながら誕生日が来た。
が、父が買ってきたのはゴードンのプラレールだった。
ちゃうねーーーん。
「きかんしゃトーマス」のキャラは青色のトーマス、緑色のパーシー、赤色のジェームズと言ったように色のちがいで大まかなキャラクターの違いが判別出来るが、ゴードンはトーマスと同じ青色。
まさにトラップ。
当時子育てにあまり参加していなかった父にトーマスとゴードンの違いなどわかるわけがないのだ。
当然僕は激怒した。太宰治の「走れメロス」は僕の激怒シーンに着想を得て執筆されたという噂もある。
ゴードンはトーマスの中でも比較的不人気キャラ。wikiにも書いてあるが、性格が悪いキャラとして描かれる事が多い機関車である。
よりにもよってゴードンなんて。
優しいエドワードや可愛いパーシーならまだしも・・・。
あまりの激怒に、後日父はトーマスを買いなおしてきた。結果的に僕はトーマスとゴードンの2台を手に入れホクホクではあったのだが、「ゴードン事件」として深く記憶に刻まれた思い出となった。
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ときは流れ30年後の2025年。
今ではうちの娘が「きかんしゃトーマス」の虜になっている。「きかんしゃトーマス」って男の子よりのアニメでは?とも思ったりするが、近年かわいいアニメにスタイルチェンジしたことや、僕が鉄道会社の社員であることが影響しているものと思われる。
先日、そんな娘に始めてプラレールを買ってあげた。トイザらスで好きなプラレールを持ってこいと言い、自分で選ばせた。
なんと娘はゴードンを持ってきたのだ。
しかも売れ残っていた旧スタイルの厳つい顔面だった頃のゴードンである。
娘氏、トーマスと間違えてね?
僕は可愛い2Dアニメ版をモチーフにしたトーマスのプラレールを提案した(こっちのほうが1000円安かった)が、どうしても旧スタイルゴードンがいいというのだ。
なんともよくわからない縁を感じながら、ゴードンを買って帰った(アマゾンで調べたら1000円くらい値引きされてて残念)。
娘は大喜びで毎日ゴードンで遊んでいる。出かけるにもバックにゴードンを忍ばせているくらいだ。
この話を家族LINEでしたら一番喜んでいたのは父だった。
父も「ゴードン事件」を覚えていたのか。
なんか良かったな。
そんな週末でした。
※ちなみに、鉄道社員の僕から見てもトーマスのアニメのクオリティはすごく高いです。