違うけど似ている。似ているけど違う。
椅子の上から見える風景。
腕は背中に、雁字搦めにされて。
あなたの吐息が耳元にかかる。
冷たい感触が触れる。
突き付けられたナイフ、
それすらも愛しいのは何故なのか。
「好きですよ」
「嘘」
「大好きです」
「嘘でしょ」
「嘘じゃありません」
「だって君、そんなこと言う子じゃなかった」
「人は変わるものです」
「そうだけど。……だから信じられない」
「信じなくて良いですよ、別に」
「そんなのは愛じゃない」
「あなたに言われたくないですね」
「死にたいの?」
「殺したいんですか?」
「……分かってるクセに、」
「言ってくれなきゃ分かりませんよ」
あなたは何が欲しいんですか?
「君のことが」
「もう充分あげてるじゃないですか」
「心まで全部だよ」
「傲慢ですね」
「だけど欲しいんだよ」
「だから好きだって言ってるじゃないですか」
「嘘だよ、そんなの」
「じゃあ嫌いって言えばいいんですか?」
「だから。それが間違ってるって」
「先に間違えたのは誰でしたっけ?」
「俺だって言いたいの?」
「なんだ、分かってるじゃないですか」
「殺すよ」
「それで心が手に入るとでも?」
「なんだかさ、」
君のことが嫌いになりそうだよ。
「それは残念ですね」
「だけど好きなんだよ」
「どっちなんですか」
「両方」
「まあ、愛憎は表裏って言いますしね」
「誰のせいだと思ってんの?」
「……両方?」
「小首傾げて可愛い子ぶっても駄目」
「えー」
「よくこんな状況で笑っていられるよね」
「だって馴れましたし」
「もっと酷いことしてあげようか」
「面白そうですね」
「イカれてる」
「お互い様です」
惹かれ合ったのは、多分、そんな理由。