猫の和

ショートショートや短編小説を不定期に投稿したいと思います。文才はありません。 猫と音楽とスポーツ

猫の和

ショートショートや短編小説を不定期に投稿したいと思います。文才はありません。 猫と音楽とスポーツ

最近の記事

ショートショート「お裾分け」

「作りすぎたなぁ」 一人暮らしを始めて、1年経つが自炊にまだ慣れない。 大学進学と同時に田舎から東京に越してきた私にとって、一人暮らしは夢だった。 家具や家電も新しく揃えてもらい、これからの大学生活を彩れるものだと思ってた。 しかし、現実は甘くはなかった。 仕送りはなく、バイトに追われる日々が続いていた。友達と遊ぶことなど、滅多にできない。家賃や光熱費、携帯の通信費だけでもバイト代は消えていく。 せめてもの節約で、自炊を始めたものの、明日もどうせ食べるからと余分に作りすぎて結

    • ショートショート『取り消せ』

      仕事帰りの夜、私はいつも通り電車に乗ろうとしていた。 ホームに着くと、ちょうど電車のドアが開いたところだった。 駆け足で乗り込もうとした瞬間、ドアの向こうに立っている大柄の男性に気づいた。 彼の存在感に圧倒され、一瞬ためらった私は、別のドアから乗ることにした。 電車の中は混んでいて、私は空いている席を見つけて座った。すると、その大柄な男性も同じ車両に移動してきて、隣に座ったのだ。彼は何かを呟いているようだったが、雑音に紛れて聞き取れなかった。 電車が走り出すと、彼の声が次

      • ショートショート:『浮気調査』

        男は探偵事務所を営んでる。 と言っても、映画や漫画のように殺人事件をズバッと解決するみたいな探偵ではなかった。 主な依頼は浮気調査だった。 だが、男の浮気調査はとても良く、依頼主からも評判が高かった。 ある日、事務所に若い女性が入ってきた。 「あの、浮気調査をお願いしたいんですけど。」 その若い女性は真希といい、薄気味悪い笑顔を浮かべて不気味な雰囲気を漂わせていた。 「浮気調査ですね、ありがとうございます。ちなみに、お相手の特徴などを教えてください。」 「そうですね、特

        • 沖縄の怖い話「木の上の女」

          夏が近づくと、怖い話や怪談が聞きたくなる時ありますよね。 私は沖縄出身で、沖縄にも怖い話はたくさんありました。 その中でも、今回は私のおじさんが体験した実話をお話しします。創作ではありませんのでよろしくお願いします。 おじさんがまだ若かった頃のことです。宜野湾市にある森○公園という場所へ、男女6名で肝試しに行くことになりました。車2台に分乗し、公園へ向かいました。 この公園は心霊スポットとしても有名で、私の母が保育士として働いていた時も、園児が誰もいないところに手を振って

          ショートショート:『流星群』

          男は流れ星が好きだった。 今日は流星群が観れるらしい。 望遠鏡を持って、いつもの山に登る。 覗いてみるが何も見えない。 今日はダメな日か そんなことを考えていると、流れ星が見えた しかも一度にたくさんだ。 男の気持ちも高まった。 やった!山に来た甲斐があったぞ! しかもあんなにたくさんの、、 男はふと思った 流れてる時間が異様に長い。 長すぎる。 もう最初の流れ星を見つけてから1分は経とうとしてるのにまだ消えない しかもすごい数だ。 どういうことだ? 男は混乱した。

          ショートショート:『流星群』

          短編小説『自動犯罪機』

          男は今日、出所をした。 大したことではない。暴力沙汰だ。 男は学生の頃からそこらでは有名な悪だった。 万引きやバイクでの暴走で補導されることはしょっちゅうだった。 大人になってからは薬物に手を出すことや、暴力を起こすことも多かった。 そういった行動が男の心を昂らせていた。 犯罪を犯すことで、男は自分の心が満たされていく感覚になっていた。 「逮捕なんて怖くねぇが、刑務所の中は暇だ。犯罪を犯しても罪にならなきゃいいのにな」 そんな気持ちが男にはあった。 出所から1ヶ月ほど

          短編小説『自動犯罪機』

          短編小説『来世面談』

          私は死んだ。いや、殺されたのだ。 道路を渡って向こう側まで行こうとしたとき、車に轢かれて命を落とした。そこから先は覚えていない。おそらく即死だったのだろう。 次に意識を取り戻したとき、目の前には頭に奇妙な光を乗せたスーツ姿の人間がいた。私は椅子に乗せられていた。 「今から、来世面談を始めます。私たちの質問に答えてください。」 スーツ姿のそいつはそう言った。私は言われるままに答えることにした。 「来世は何になりたいですか?今世と同じでも構いませんし、違う動物でも構いません。植物

          短編小説『来世面談』

          短編小説『内見』

          「こちらが今回ご案内するお部屋です。どうぞお入りください。」 私はいつも通りに案内をした。今日のお客様は女性だった。 黒髪ロングで白いワンピースがよく似合う美人だった。 女性は優雅に微笑みながら部屋に足を踏み入れた。 私は彼女の美しさに一瞬見惚れながらも、プロとしての務めを果たすために口を開いた。 「お部屋の印象はいかがですか?」 彼女は部屋の中をゆっくりと見回し、窓の外の景色まで一通り確認した後、満足げにうなずいた。 「とても気に入りました。ここに決めます。」 私は安

          ¥100

          短編小説『内見』

          ¥100