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『月とコーヒー』5万部突破記念 吉田篤弘「朗読+トーク」イベント感想

大好きな吉田篤弘さんの朗読+トークイベントへ行ってきた。
吉田篤弘さんの作品が好きな人しかいない空間。ぐるりと見渡して、この人たち全員と友達になれる可能性があるんだと思った。

事前の情報では朗読するのは2つ、そして質問コーナーだったが、2つだけじゃもったいないから。と吉田さんは全作品の一部を読み上げ、その一つ一つに「この一行に全てが詰まってる」、「これが書きたかった」と感想を残してくれた。作者ご本人による解説なんて豪華すぎる。

その中で読み漏らしてしまうような、でも大事な前談があるという話をしてくれて、どうしてじぶんが吉田篤弘作品を好きなのかがわかった気がした。
語られること、語られないことのバランス。それは創作の中だけでなく現実の世界でもあって、みんな言わないだけで何かを抱えている。
吉田篤弘作品は少し不思議な世界だけれど、登場人物に親しみを感じるのはみんなが何かを抱えているからなんだろう。

フルで朗読してくださったのは世界の果てのコインランドリーと、青いインクの話。
内容をすでに知っているのに、いや知っているからこそ前のめりになってしまった。こんなに惹きつけられる朗読は初めてだったかもしれない。

質問コーナーも有意義で、短編を書きたいという気持ちが刺激された。
書きたい、ではなくてわたしは書くだろう。やわらかな物語を書く。今決めた。

僕は友達は少ないけれど、たくさんの登場人物がいる。と仰っていて、友達が少ないわたしは救われた気持ちになった。そうか、わたしも物語を書いていつでも会える友達を作れば良いんだと思った。
わたしがギターを弾けなくても、わたしの新たな友達はギターが得意かもしれない。わたしは猫との生活ができないけれど、わたしがこれから仲良くなる友達は猫との暮らしをすでにしているかもしれない。わたしが会いたいと思う人物を描こう。

物語の入口はある日突然、目に飛び込んでくるらしい。日々の積み重ねとも言っていた。
週5日の変わり映えしない通勤と労働の隙間、突然光るものを見つけるかもしれない。光っていないかもしれない。光っていようとなかろうと、なにか昨日と違うと気付いたらそれをポケットに入れよう。ポケットに入れて、転がして、もう1つを待つ。

短歌とエッセイは穂村さん、小説は吉田さんという憧れを胸に、わたしは少しずつ進んでいく。

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大森薫
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