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ネイティブでも間違える大学に関する英単語:Faculty, Program, Calendar

英単語は英単語でも、文脈によって意味合いが変わることがあります。今回は、中でも複数の意味があってややこしく、ネイティブも間違えてしまう大学に関する単語三つ「Faculty」「Program/Programme」「Calendar」に焦点を当てていきます。


Faculty

Faculty には「教員」「学部」の二通りの意味があります。Faculty に属する Faculty がいらっしゃることになります。

  • "Faculty" を「教員」として使うのは主にアメリカ英語です。イギリス英語ですと「教員」は "Staff" や "Teaching staff" です。

  • "Faculty" を「学部」として使うのは主にイギリス英語です。アメリカ英語で「学部」は "College" や "School" と表すことが多いです。

アメリカ合衆国のお隣さんであり、イギリス連邦諸国の一員であり、アメリカ英語もイギリス英語も使う人々が暮らすカナダでは、両方使われます。ブリティッシュコロンビア大学(UBC)では、学部も教員も Faculty です。よって、文脈でどちらの意味か判断しなければなりません。例をいくつか見ていきましょう。

  • Faculty of Science
    ここでの Science は教育の分野のうちの一つ(理学)ですので、Faculty of Science は「理学部」となります。
    難易度★

  • Faculty member(s)
    Faculty に member(一員)が加わると、Faculty の意味合いは「教員」になります。
    難易度★

  • Faculty Advising Office
    Advising office は「相談室」ですが、学部の相談室なのか、指導教員の相談室なのか…というところですが、高確率で「学部の相談室」です。
    難易度★★

  • Faculty Advisor
    対象が学部生ですと、「学部のアドバイザー」となりますが、もし対象が院生だった場合は「指導教員」である可能性があります。これは、文脈によります。
    難易度★★★

ネイティブが間違えてしまったエピソード①
専攻を認知システムに変更をするために理学部に編入をしたい学部生が「Faculty Advising に相談しろってウェブサイトに書いてあったから認知システムの科目を教えている教授に相談したら『それは自分の管轄外だからわからないけど、Candice なら手掛かりを知っているかも』と言われた」ので、私に連絡してきたことがあります。その学生には、大変申し訳ないけれどこれは学部の話なので(専攻アドバイザーである)私の管轄外でもあることを伝え、理学部の相談室に案内しました。

Program/Programme

Program(アメリカ英語の綴り)・Programme(イギリス英語の綴り)には元から色々な意味がありますが、大学の仕組みにおける program には「課程」「専攻・副専攻」「(学部を構成する下位組織としての)学科のようなもの」と大きく三通りの意味があります。

①課程

  • Degree program:課程

  • Undergraduate program:学士課程

  • Graduate program:大学院課程(修士課程・博士課程を一つに括る表現)

  • Master's program:修士課程

  • PhD program:博士課程

  • Program Completion Letter:課程修了書

②専攻・副専攻

専攻は "Major"、副専攻は "minor" と訳されますが、両方とも "program" で一括りできます。"What program are you in?" という質問は、「専攻は何か」を聞いています。UBC では、学科がいくつかの program を提供することが一般的ですが、program が program を提供することもあります。どういうことでしょう?

③(学部を構成する下位組織としての)学科(のようなもの)

大学を構成するのが学部(Faculty、College、Schoolなど)で、学部を構成するのが学科ですが、学科という枠に収まりきらないものもあります。例を二つ見ていきましょう。

  • UBC の Cognitive Systems Program(認知システム専攻プログラム)は、二つの学部(文学部・理学部)と四つの学科(哲学科、言語学科、心理学科、コンピューターサイエンス学科)を跨る専攻です。これを運営するのは、どの学科にも属さない program です。

  • UBC 文学部の Interdisciplinary Studies Program(学際研究プログラム)は、学科ベースの専攻に代わる学際的アプローチを提供します。これを運営するのもまた、どの学科にも属さない program です。

Program は学科でこそはないですが、機能は学科に似ています。

ネイティブが間違えてしまったエピソード②
"Program Completion Letter" は「課程修了書」(教育機関などで定められた課程を修了したことを証明する書類)です。この program は①の意味「課程」なのですが、学生が②の意味「専攻」だと誤解してしまい、その専攻を提供する③学科(のようなもの)の職員(=私)に依頼をすることが度々ありました。

Calendar

大学でのカレンダーと言えば「授業カレンダー」「学校の年中行事を含む年間予定が記されたカレンダー」ですよね。

ここで一度 UBC の Academic Calendar をご覧ください。

カレンダーなのにカレンダー以外のものがてんこ盛り!言わば、大学の「公文書」でしょうか。大学の公式情報が全て記されている、究極の説明書です。全ての大学のカレンダーがこういうわけではありませんが、カナダでは Academic Calendar=公文書と解釈する大学が多いです。

例外はあります。サスカチュワン大学は、総合手引書のことを "Academic Calendar" の代わりに "University Catalogue" と記していて、"Academic Calendar" を「学校の年中行事を含む年間予定が記されたカレンダー」の意味で使っています。

Calendar と catalog(ue) の関係性

アーカイブズ学(文書館学、史料管理学、記録史料学)において、calendar は「リスト」「目録」「一覧」「公文書」などを指します。細かなニュアンスはアメリカとイギリスで違い、北米では基本的な目録を意味する一方、イギリスでは完全なる記述を意味します。イギリス連邦諸国の一員であるカナダの大学が、大学の全てについて事細かに記されてある「公文書」を毎年公開し、過去に公開された記録は全てアーカイブに残っていることからすると、calendar の意味はこの意味で間違いないと思います。

Catalog(アメリカ英語の綴り)・catalogue(イギリス英語の綴り)にも「目録」「一覧」などの意味合いがあります。北米の大学では、calendar の代わりに catalog と表記する大学が多いです。

ネイティブが間違えてしまったエピソード③
卒業要件や学年進級の要件を満たしていなかった理由で相談室を訪れる学生に共通する点は、公式な情報が全て Calendar に記されてあることを根本的に知らなかった点でした(「日にちが載っているだけかと思った!」と驚かれることも結構ありました)。その気付きを得てからは、会う生徒全員に Calendar の重要性を説くことを徹底しました。

以上、ネイティブでも間違える大学に関する英単語でした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。他に思いつき次第、第二弾もあるかもしれません。その時は、どうぞよろしくお願いいたします!

#元海外の大学職員による日本の大学職員のための英会話術

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