騙されないで、数だけアピってるクリニックに
暑い。
病院の中は涼しいのですが、平日生活している病院近くのワンルームの雑居部屋は、夜中まで暑い。部屋を選ぶときに、木をふんだんに使ってなんかログハウス風だなと思ったのは間違いでした。
昼間の太陽熱をしっかりと溜め込んだ木材は、夜中までクーラーが効かないくらい、遠赤外線効果のような、じわーっとした熱を部屋中にぶちまけ続けて、病院が天国に感じます。
さて、タイトルの通りですが、皆さん、病院選ぶときに、外科ならオペ件数、内科なら有名な先生がいる、とかそんな基準を考えると思いますが、
内情を言ってしまえば、大切なのは、やった数じゃなくて、治療がうまくいった、つまりがん治療なら、がんが小さくなった、生存期間が他の施設より長い、そういうちゃんとした科学的成績をもっているかどうか、これが選択基準になります。
最近、というか、めんどくてもう5年くらい、僕も病院のHPを更新していませんが、それはちゃんと学会でうちの成績を報告し続けているし、ブログも書いてるし、当然患者さんも診察治療しているわけだし、以前は講演会もやっていたしで、僕としてはHPでざっくりうちのセンターの治療内容を知って、今のNoteや、以前のアメブロのような、ブログで、僕の考え方、いや、一般的ながん治療医の考え方を知っていただければと思って、そんな言い訳でHP、更新さぼってます。
さて、どんな治療でも適応があります。
一番ダメなのは、いつも書きますが、後先考えず、患者さんが希望するからやりました、ってやつ。クリニックでよく使う常套手段ですが、もっと正しい科学的考え方が存在しても、彼らはそもそも学会なんかまともに来ていませんし、自分のとこでやってるなんちゃって治療が正義だと信じ込んでるから、今の最新のエビデンスをほとんど知りません。だから、本来ならやるべきでない患者さんに、あなたが希望したんですよ、といってカテをやってしまう。
僕は、正反対。
やはり、エビデンスを最優先し、エビデンスで太刀打ちできない部分で勝負しています。
幸い、ここの病院、阪大から一番近い病院で、阪大の先生方がいろんな診療科で外勤に来てくださっています。
癌治療でいえば、個人情報になるので詳細は書きませんが、超有名な腫瘍内科の先生も外来診療や抗がん剤治療を当科でしてくれていますし、また大阪重粒子線センターは阪大の先生が多い(はず)ですが、今日も重粒子線治療後の患者さんのことで外勤に来ていた重粒子線治療をされている阪大の先生に質問することができました。
クリニックに勤務していたときは、大学やがんセンターの先生と患者さんのことで相談できる機会などなく、むしろ、SNSやかげで、標準治療ではないことをしていることを激しく否定されていたことも知っていました。
今は、グループの倫理委員会も最初から通して、このように癌治療、さらにがんではない高血圧や糖尿病のことも内科に相談したりとで、やはり癌治療は総合病院でするべきだと確信しています。
さて、11月に、日本放射線腫瘍学会第37回学術大会で少し当院の成績を交えて、当科が得意としている動注療法を放射線治療科の先生方を前にお話しさせていただく時間をいただいており、改めて、約10年間で僕が実施した動注療法の成績をまとめています。
ものすごい数ですが、その中で、今回は、放射線治療を一度した病変が再燃したときに動注を実施したらどのくらいの成績だったか、これをまとめていました。
重粒子線や陽子線を含めて、放射線治療は素晴らしい局所治療だと思います。
一方で、一般的に同じ箇所に追加治療をすることはできず、一発勝負な治療でもあります。当然、放射線治療を根治的に実施し、その後薬物治療などして根治に近い状態にもっていければいいのですが、放射線治療の中には、根治が難しいのでせめて病勢を遅らせようと実施する緩和的照射というものもあります。いずれも言えることは、2度目の照射は難しい、ってことです。
多くの患者さんは上記のような状態の際には、抗がん剤が効きにくくなっているはずですので、すでに治療の選択肢がかなりなくなっています。
カテーテル治療は、そういうケースでも、解剖の条件、それと、がん治療体系の中で他にもっと有望な治療がない場合、有効な治療になりえます。
カテーテル治療には塞栓術といって、栄養動脈を詰めてがんを兵糧攻めにする治療もありますが、多くの再発転移がんの場合、塞栓だけで制御は不可能です。
もう、散々やりつくして、意味がないとわかっています。
血流抑えただけで、再発は制御できませんよ。
その点、動注、ないし、塞栓を併用した動注は、今まで使用してきた抗がん剤の効果を数ランクあげるために高濃度でがんに直接注入します。一般的な再発がんの場合は、塞栓ではなく動注です。これは間違いないです。
当科では、放射線治療後の再発に対しても、現在も積極的に動注療法、ときに塞栓の併用をしていますが、いま、7〜8年分くらいの患者さんを振り返ってデータまとめています。まだ2年分くらいありますが、今、これに該当する症例が27人もおられました。そして、まだ正式なデータではありませんが、そして、こういうデータは学会等で正式に発表するものなので書けませんが、はっきり言って、増悪した患者さんは1名だけ、半数以上の患者さんは縮小とがん症状の緩和が得られていました。
上記のような患者さんは、かなり後半戦の患者さんが多く、自分の記憶だけでは、カテよりも緩和治療や一般的内科治療に一生懸命だった印象が強く、実際、カテは3週間ごと基本やりますけど、やるのはその2時間程度で、患者さんと関わる残りの時間のほうが記憶に残ってました。またそのまま緩和治療に移行し看取った方も何人もおられたので、実際にどの程度、放射線治療後の再発に対して効果があるか、実感がありませんでした。まじか、こんな成績よかったんか!
と驚いている今です。
医者の多くは、多くの患者さんの治療の中で、最も成績の良い部分だけが記憶が残り、悪い結果だった患者さんのことを忘れがちです。
そして、その良い部分だけに引きずられ、その時の治療を繰り返し、でも治療効果は人それぞれで、医師個人のインプレッションだけでやる癌治療はいつまでたっても科学ではないですし、残念ながら成績もあがらなければ、評価もされません。
これがクリニックの実態だと思ってください。
正直、毎年、メジャーな国内の学会で当科の成績を発表し続けることは、時間的にかなりしんどい(日常診療とたまのポケモンですでにくたくた)のですが、
こうやって自分の大切な患者さんたちの生きた記録を見直すことで、
次の、そしてまたその次の患者さんの成績を向上させていくことが医師の使命だと思っています。
当科の成績、楽しみにしていてください。いやはや、良すぎて驚いた。