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郊外についての共有事項【都築崇広】
親が運転する車の中から見ていた風景の中で一番覚えているものは、電線と車窓で区切られた窓。
ぼーっと車に揺られながらその風景を見ていたことを覚えている。
彼のことは今年のVOCA展で見ていた。
木片を加工した板にチラシの森の部分を細切れにして貼り付けて、ある種風景画を構成していた。切れ切れになった木々は風に揺られているようでもある。
森の全容が細かくわかるわけでもないのに存在感あって、空白にも木が生えていることがわかる。描かれているのは結構な森なのでは?という想像が膨らむ。
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この描き方に長谷川等伯の《松林図屏風》を思い出す。
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またこの木材は環境に配慮した製法で製造されている木材で、木片が集まって構成されている。その木片がチラシが貼られたことにより森に戻るという構図がちょっと皮肉めいていて面白い。そしてそのチラシも森の木であった頃があっただろう。
彼の作品を見に行ったのはこのシリーズの展開が見られることを期待して行ったのであまり下調べせずに行ったのだが、板にレーザーで風景を焼き付ける作品がとても魅力的だった。
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木目を雲や霧、霞などの空気の流れに見立てて風景を描いており、ビル群ががその合間に顔を出している。この屏風画(?)は木材を輪切りにしているので、目立つ木目が何度も出てくる。環境に配慮して木材ということがわかる。こういった木材がこのビル群や都市の発展を支えている。
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また地方都市のシリーズには国道や電線が雲間を走っており、その位置関係までわかる。地方都市に住んだことのある人ならわかる風景。懐かしさまでその雲が運んでくるようだ。
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タイトルから見るに朝、昼、夕立など時間帯により描きわけていて、朝の澄んだ空気感、日差しの強さで影か濃くなったり、夕立が作った水たまりが建物を写したりとわかるわかる、と頷いてしまう。
この作品は地方都市や郊外の暮らしを経験したことがある人なら、その空気や匂いを感じてしまうだろう。高架や国道の風景に感じる懐かしさ。
日本のどこの地方都市でもこの景色の懐かしさは共通である。
◼️作家紹介
都築崇広
1988年埼玉県生まれ、東京都在住。
※展覧会情報
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