毛利悠子〈モレモレ東京〉@東京都・銀座
水やモーターが駆動することで音や音楽を発生させる作品で有名な毛利悠子。
音や光の明滅で目で見えない力の存在を知覚させるようなもので、ついその現象を待ってしまう。
この作品はDavid Horvitzとの共同の展覧会だが、とても印象的で、水の落ちる力で車輪が回ったり音が鳴ったりする仕掛け。つい次の動きを心待ちにした。
本展覧会の〈モレモレ東京〉は都内の駅構内の風景を写している。
駅構内の雨漏り・水漏れの被害を最小限に防ごうとした努力の結果、チューブやバケツが置かれている風景を見たことがあるだろう。
きっと工事が難しいんだろうな、と思いつつ濡れやしないかちょっと気になったり。私自身は患者に繋がれた点滴やチューブを彷彿としてしまい不穏な空気を感じたりする。
一方で東京の駅構内でしか見たことがないな、とも思うからあるあるな風景・風物詩的な側面もある。
彼女はこの風景写真ををモレモレシリーズと題して発表している。
日本各地のみならず世界中で展覧会経験がある彼女だからこそ、この風景に違和感や面白さを感じることができるのだろう。
ここまで巧妙に駅構内中のモレモレを逃がしていると思うと、工員さんたちの器用さやチューブの区画整理作業の見事さに感動すら覚える。駅の中で雨にあっていないのはみなさんの技術のおかげだ。
ところどころに毛利作品に見られる構造物もあり、インスタレーションに通ずる親和性を感じる。
いつもメカニックで賑やかな毛利作品を期待しちゃうけれど写真で切り取られた彼女の目線も面白い。
ちょっと不穏な気がしていた都内の駅のモレモレが少しだけ愛おしく見える。
本展は12月24日まで開催中。
詳細は一番下のリンクからどうぞ。
■作家紹介
毛利悠子
1980年神奈川県生まれ、東京都在住。
■展覧会情報