主人公の足?【嶋本麻利沙】
島本理生の小説がバイブルだった。
小学6年生の時にリトルバイリトルを読んで、そこからずっと小説は彼女のものだと思っていた。
いつも新刊はかかさず読んでいた。
その中で『週末は彼女たちのもの』の表紙の写真になんとなく引っかかるものがあって、これは女性が撮ったものだろうな、と漠然と感じた。
なぜだかはわからないけれども。
数年後、彼女の名前を知る。
ポーラミュージアムアネックスで見た個展で、なんとなく、あの小説の表紙の雰囲気を思い出して、本の記載を確認すると個展の作家と同じ名前を見る。
嶋本麻利沙
彼女とは随分前に出会っていた。
色温度が低いというか温かみがあるというか。
彼女の写真はどれも色がオレンジ色に傾いている気がする。
だからだろうか、ものをキリッと輪郭立ててモードに見せるというより、気になったからシャッターを切った、みたいな自然さを感じる。
こう、「ハイポーズ!」で構えてないというか。
写真は詳しくないけれどこういう日常に馴染むような写真が好きだ。
日常は当たり前の景色に見えて実はもう二度と来ない瞬間が多くあり、ものの
配置の一つとっても同じ瞬間はこない。
その一コマを写真に撮っているような。
日常は当たり前の蓄積ではあるが実は唯一の結晶だったりする。
作家紹介
■嶋本麻利沙
1980年生まれ。
※ポーラミュージアムアネックスでの展覧会