物理的なチェックの重なり【松岡柚歩】
麻布のギャラリーの外からでも目立っていた彼女の作品。
ギャラリーのHP画像で見る限りにはテープ状のものが画面に貼ってありそれでチェックを構成しているのかと思っていた。
近寄ると違うことがわかる。
あ、絵の具で線を描いたんだ。
こんなに盛り上がるほど絵の具を盛って、表面がつるっとするように仕上げ、乾くのを待つのは結構難しい。
構成要素は線が中心なので描けそうと思いつつも、私にこの忍耐力はない。
さらに言うとこの色のチョイスもできない。華やかな色で構成され合う・合わないの次元ではなく、絶妙なバランス感覚を持っている。力強く太い線なのに下のレイヤーの色が透けていたり、この印象を見越して描く想像力がいい。
その上に有機的な形を描いていて、その形が直線と思想がまるで違くなっていて面白い。本当に同じ画面に共存できているのが不思議なくらい。
着る服は3色でまとめよう、みたいな風潮が強い中で生きていることが窮屈に思えるくらい自由な取り合わせだ。
2Fの作品は厚みのある絵の具の線を交差させ、それを何層にも重ねて、表層を剥ぎとるという、先程までの平面的な世界とは異なる表現をしている。
暴力性すらも感じるが、その画面は織物のようでもあり、剥いだ断面から層の色も垣間見られその組み合わせも彼女のバランス感覚の良さを感じる。
表層は蝋で固められたみたいな閉ざされた印象もあって剥いだ部分に感じる解放感がなんとも言えない。
手垢に感じる部分もありつつデザイン的な要素も強い彼女の作品は、洋服や内装とも親和性があるように思う。もちろん制作の過程が複雑なので壁に描くとかになるととてもたいへんになりそうだが…新たな展望ばかりが見える。
リビングに置いたら日々刺激がもらえそうなんて所有欲も掻き立てられる。
また会いに行きたくなる作品。
作家紹介
■松岡柚歩
1996年兵庫県生まれ。
こちらの展覧会で鑑賞しましたが、展覧会自体は終了しました。
※ギャラリーのインスタグラム
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