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刺繍絵画展に行く【50代在り来りな私が思うあれこれ】

気になっていた刺繍絵画展を日本橋髙島屋に観に行った。

明治から大正にかけての輸出品としての刺繍画。

圧倒的な緻密さで狂気すら感じる技巧の数々の作品。

鳥の羽毛の一本一本、白波のグラデーションを丹念に刺繍してある。
どれだけの集中力と根気が必要だろうか。

効率優先の世界とは真逆である。
今の価値観からすると「何それ必要?」である。

実際、絵と見間違うほどの刺繍絵画の同じ構図の下絵が隣に飾ってあり絵画作品として成り立っている。

忙しい現代人には刺繍でやる意味ある?と思われそうだ。

しかし当時は輸出品として、日本の職人の意地もあっただろうし器用さ繊細さをアピールする目的もあったのかもしれない。
純粋に絹糸の刺繍がとても美しく、万国博覧会にも出品され世界的に賞賛された事もうなずける。

六人がかりで六年の歳月を掛けた作品も展示してあり、圧巻で言葉もでなかった。

会場は場所柄か年齢層が高く、50代の娘と80代母で観覧している人も多かった。

母が元気な時は、時々一緒に出かけていた。
母と百貨店の工芸店や催事を観たあとランチをして買い物をする。
母は
「たまには贅沢しても良いわよね」
と買い物を楽しむ。
たいして贅沢でもない家庭用品などを買っていた。
いつも最後にデパ地下で私にいろいろ買って持たせてくれた。
「○○(私の息子)に食べさせてあげなさい」と言って。

当時の私はありがたいと思いつつ、荷物になって面倒だなとも思っていた。

その時はただの日常の一部にしか過ぎない時間が、今思い返すと切ない。

母は今、老人ホームで何を思っているのだろう。

デパ地下でお土産を買ってくれる母もいないので、自分で朝食用のパンだけを買って帰途についた。

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