フジテレビの記者会見で感じた個人情報保護の問題
ここ最近は生成AIパスポートの試験関連の記事を書いていました。その中で、プライバシーについてもお伝えしたのですが、非常にタイムリーなニュースがございました。
先日、フジテレビの不祥事に関する記者会見を視聴しておりました。その中で個人情報保護法を無視した記者の質問がありましたので、今回は試験対策ではなく、記者会見について私の思うことを書きたいと思います。
記者会見の様子
フジテレビは1月27日、約10時間半に及ぶ記者会見を開きました。この会見は、同社のコンプライアンス問題に関する説明を行うもので、社長の港浩一氏や会長の加納修二氏が辞任を表明する場となりました。
会見中、多くの記者がフジテレビの対応について厳しい質問を投げかけましたが、その中でも特に問題視されたのが、フリー記者である横田増生氏の発言でした。
問題の質問が発生
記者会見の中盤、横田増生氏はフジテレビ側に対し、次のような質問を執拗に繰り返しました。
「女性が中居さんのもとへ向かったことには、同意があったのか、それとも不同意だったのか?」
この質問に対し、フジテレビ側は当初「意思の一致・不一致という認識の違い」という形で回答しましたが、記者から「つまり、同意か不同意かということですね?」とさらに追及されました。
その後、フジテレビ側はこの発言を撤回し、「お答えできない」と改めて回答しました。
このやり取りを見ていて、私は強い違和感を覚えました。
何が良くなかったのか
まず、この質問は被害女性の個人情報や要配慮個人情報を公開するよう求める質問と捉えることができます。
個人情報保護法では、個人情報を第三者に提供する場合、原則として本人の同意が必要です。
フジテレビが第三者委員会による調査のために被害者女性の同意を取っている可能性はありますが、それを記者会見という公の場で公表することに同意しているとは考えられません。
そのため、フジテレビ側がこの質問に対して明確な回答を避けたのは正しい判断だったと言えます。
一方で、横田氏の質問は、記者としての倫理観を欠いた発言だったと私は考えます。
真実を明らかにすることはジャーナリストの役割ではありますが、その大義名分を盾に必要以上にセンシティブな情報を引き出そうとするのは許される行為ではありません。
もし、横田氏が個人情報保護法の知識がなく、この質問をしていたのであれば勉強不足と言わざるを得ません。
しかし、もし法の知識がありながら、あえてフジテレビ側に言わせようと迫ったのであれば、非常に悪質な記者だと感じました。
記者会見は情報を引き出す場ではありますが、被害者の権利を侵害するような質問は慎むべきです。
今回のような記者の発言が今後も続くのであれば、記者自身にもコンプライアンス教育が必要だと感じました。
場の空気を一変させた優秀な記者
横田氏の質問によって、会場の雰囲気は一気に険悪になりました。
その中で次に手を挙げたのが、インターネットメディア「The HEADLINE」編集長の石田健氏です。
石田氏は、次のように発言しました。
「同意があったか不同意だったかに関しては、女性側の二次加害になってしまう可能性がある。今声を上げられてた方は私より知見も経験もある方なので、もしこの会場で私だけが異なる意見だったら本当に申し訳ないんですけれど、二次被害に配慮して取材も会見もする。もちろんガバナンスの不全やコンプライアンスに関して問うことは大事だと思うんですけど、そこが重要だと思う」
この発言を聞いた瞬間、私は「これこそが記者としてのあるべき姿だ」と感じました。
不祥事の真相を追及することと、被害者のプライバシーを守ることは両立できるはずです。
石田氏の発言はそのバランスを取るための大切な視点を示したものであり、その考え方に賛同した記者たちからは拍手が起こりました。
このやり取りを通して、私は「ジャーナリズムにも品格が求められるべきだ」と強く思いました。
まとめ
今回は生成AIとは直接関係のない話でしたが、個人情報の取り扱いについてタイムリーな事案があったため、意見を述べてみました。
今回の記者会見では、フジテレビの対応にもスッキリしない点がいくつかありましたが、
少なくとも「答えるべきでない質問」に対して明確な線引きをし、10時間以上にわたって対応したことは評価できると感じています。
一方で、記者側にもコンプライアンスの意識を持ってもらう必要があると痛感しました。
情報を伝える立場だからこそ、その責任をしっかりと認識し、「被害者の人権を守るジャーナリズム」が求められる時代になっているのではないでしょうか。
今後の記者会見では、取材のあり方が改めて見直されることを期待したいと思います。