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君たちはどう生きるか-リハビリのセラピストへ(その4)

 アメリカの課題主導型アプローチではHands therapyが治療体系から除外されていました。それで僕は日本向けにhands therapyが組み込まれたシステム論のアプローチを作りたかったのです。その理由は前回述べています。
 あともう一つ、アメリカのシステム論的アプローチに含まれていない魅力的なアイデアがありました。それはシステム論の新しい理論の一つ、アルゼンチンの生物学者、フアン・マトゥラーナとフランシスコ・ヴァレラが提唱する「オートポイエーシス」(autopoiesis) 理論です。
 たとえば動的システム論を始めこれまでの科学的方法というのは、システムの外部から客観的に現象を観察するのが基本でした。ただ人をこの外部からの視点で見ていると、まるで人を動く機械のように見てしまいがちです。動きの形の変化を見て、内部の筋や骨の動きに結びつけるのは、機械の作動を理解するのと同じです。
 でも動物は機械とは丸っきり異なる作動の特徴を持っています。これは構造の視点から作動を見ていては理解できないものです。オートポイエーシスはシステム内部の視点を提唱しています。システム内部の視点から作動を観察するのです。これによって初めて気づかされる理解があるのです。
 それは作動の特徴です。たとえば随意性とは「思い通りに動くこと」と考えられています。こう表現するとなんだか運動システムは意識の奴隷あるいは手下のように感じます。
 でも運動システムの立場から見ると、随意性は「意識が思い通りの結果を得ること」ということになります。意識は体を動かしているのではなく、課題を運動システムに丸投げして、運動システムが状況を理解し、利用可能運動リソースを探しては体を動かして課題を達成しているのです。緊急時には運動システムは意識に先んじて体を動かすこともあります。
 つまり観察の立場を変えると、これまでとは違った運動システムの作動が見えてくるし、これまでと異なった理解も生まれるのです。
 こうして僕はアメリカの課題主導型アプローチの持っている「人はアクティブな学習者である」という人間像にくわえて、hands therapyの有効性を訴え、オートポイエーシスの視点からの「作動の特徴」という新しい視点を加えて「CAMR(Contextual Approach for Medical Rehabilitation、和名は医療的リハビリテーションのための状況的アプローチ)を提唱することになったのです。
 君たちはどう生きるか?(その5 最終回に続く)
※今回の記事は、FacebookとNo+eの両方に掲載しています。

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