君たちはどう生きるか-リハビリのセラピストへ(その2)
アメリカで新しい基礎理論への移行が起きたのは1990のII Step会議です。これは全米の大学の中枢神経系の教育の中で、従来の階層型理論に代えて、システム論を学生に教えていくことが決定されたのです。
アメリカのシステム論はベルンシュタインのアイデアはもちろん、テーレンらの動的システム論やジェームス & エリザベス・ギブソンらの生態心理学の影響を強く受けて生まれています。そのリハビリテーション・アプローチは一般的には「課題主導型アプローチ」と呼ばれます。
もっとも基本的な考え方の一つは、動的システム論の「自己組織化」のアイデアや生態心理学の環境に自ら関わっていく人間像の影響を受けて、「人は環境内で主体的で自律的、アクティブな学習者」として考えられます。それでセラピストは、適切な課題設定をし、環境設定と課題提示をすれば、患者さんは自ら動いて自ら課題達成方法を生み出していくと考えています。
だからセラピストは自ら患者に触るhands therapy(手を使って治療すること)は必要ないと考えられています。その結果、hands therapyがリハビリの体系から除外されることになります。
ただしどうもこれはアメリカの独特の事情ですが、システム論に関わった学者達はどうもhands therapyを非科学的であると嫌悪しているように思えます。いくつかの論文にhands therapyに対する不信や嫌悪が見られます。
まあ、確かに中には結構いかがわしいものもあるのでしょうが、manual therapyやPNFのように解剖学、生理学、運動学などに基づいて成り立っているhands therapyもあるのですけどね。
君たちはどう生きるか?(その3に続く)
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