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『炎の少女チャーリー』と、きつーいお灸をすえますよ

何でも燃やしちゃう少女

スティーブン・キング原作『ファイアースターター』は、1984年に一度『炎の少女チャーリー』として映画化されており、今回はリメイク。最初の作品はドリュー・バリモア初主演作で、個人的にも懐かしさを感じる1本。リメイクも、それなりに楽しみにして劇場へ出かけたのですが、結果としてはいまひとつ。いくつか不満点もあり、淀川長治さんの言葉を借りれば、制作陣に対して「ここはひとつ、きつーいお灸をすえますよ」という気持ちです。見ていてもあまり燃えませんでした。炎の少女なのだから、私の心をもう少し燃えさせてくれてもよかったんじゃないかと思うのですが。

あらすじは、とある夫婦と、そこに生まれたかわいらしい娘で構成された家族が中心となります。夫婦はかつて、学生時代にアルバイトで治験薬を飲んだのですが、その際に特殊能力が宿るアクシデントが起こってしまいました。そんな夫婦のあいだに生まれたチャーリーは、怒りと共に、近くにあるものを発火させてしまう能力を持って生まれた子どもです。娘の能力についてきちんと教育し、制御できるように育てるべきだと考える母親と、何も知らせずにそっとしておくのがいちばんだと考える父親のあいだで、意見は揺れます。特殊能力を悟られないよう、携帯電話も持たずにひっそりと生きる家族。しかし、チャーリーは成長と共に、その能力を異様に高めていくのでした。

険しい顔をしたチャーリーが「わーっ」と叫んでいる独特の画

燃やし方に工夫がほしい

本作の何がうまく行っていなかったかといって、「チャーリーが何かを燃やす場面が気持ちよくない」ことに尽きると思うのです。せっかく炎の少女が炎を出す場面なのですから、「やった!」と思いたい。たとえばいじめっ子を撃退するのでもいい。悪徳科学者を焼き尽くすでもいい。彼女の怒りが炎となって敵を燃やす瞬間を見たいし、カタルシスを覚えたいわけです。ところが、チャーリーが何かを燃やすとき、なぜかチャーリー本人のアップになってしまう。険しい顔をしたチャーリーが「わーっ」と叫んでいる独特の画が入って、次の瞬間には敵が燃えている。そうではないと思うのです。観客が見たいのは、むしろ引きの画でチャーリーと敵の両方がひとつの構図に収まっていて、彼女がにらんだ瞬間に相手がメラメラと燃え出す、といった「攻撃が派手に繰り出されているところ」ではなかったでしょうか。本人のアップだと、対象がちゃんと燃えてるかわからないんですよね。あるいはバジェットの関係で、派手に燃えるシーンがあまり出せなかったのかもしれません。

また、2022年にこのリメイクをやる必然性がつけくわえられていなかったのも不満でした。何か現代的なモチーフを織り込んだ方がよかったのではないか。劇中のせりふで「Netflixで見たんだけどさ〜」と言うくらいしか、現代的な要素がないのもやや不満。よかった点としては、炎を制御できず、母親の腕をやけどさせてしまったチャーリーが「本当はお父さんを狙った」と語る場面でした。これ言われちゃうお父さんつらい。また、このお父さんってのが妙になよなよしていて、存在感としては結構好きでした。

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