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『アンチャーテッド』『オペレーション・ミンスミート ─ナチを欺いた死体─』

『アンチャーテッド』

全編を通して、これほど「ちょうどいい温度感」な映画もなかなか作れるものではないと感じました。この「適度におもしろい」映画の作り。熱すぎず冷たすぎずの絶妙な温度調整はみごとだと納得するほかありませんでした。すべての映画が傑作を目指しているわけではないのです。また観客の誰もが、超絶的な傑作映画だけを見たいと思っているわけでもない。世の中にはさまざまな需要があるのです。たまにはのんびりとぬるま湯につかるような作品に接したいと感じている観客にとって、この温度感の作品は驚きだと思います。

物語は、主人公のネイサン・ドレイク(トム・ホランド)が、亡き兄の友人であるビクター・サリバン(マーク・ウォールバーグ )と出会い、共に「海図に載っていない場所」(uncharted)に隠された財宝を見つけようとする物語です。インディー・ジョーンズ的なお宝探しは、ここまで技術が発達してしまった現代においてなかなかリアリティを持ちにくいのですが、物語的にそこは深追いせず、リアリティ追求よりは楽しさ重視のアクション映画として構成していったのが実によい。予告編で見せ場として提示されていた飛行機上でのアクションも、あり得ない動きばかりなのですが、見ている方もその「あり得なさ」を、ポップコーンをかじりながらのんびり楽しむという温度感で接することができます。見終えて特に何かが残る映画でもないのですが、それなりに満足して劇場を後にするというタイプの作品です。

『オペレーション・ミンスミート ─ナチを欺いた死体─』

第二次世界大戦中、ドイツをだますため、死体を浜辺に漂着させ、その死体にくくりつけられたカバンの中に偽の軍事機密を仕込んでおくという話です。この機密をドイツ側に渡し、ドイツがその機密に書かれた作戦へ対抗するために準備したところで、別の作戦をぶつけて勝利を得るという計画が実際に行われたそうです。とても変わった映画でおもしろかったです。どうすれば相手に信じてもらえるような物語を作れるのか。

映画の登場人物は、この死体や付随する機密文書を本物らしく見せるためにさまざまな工夫を凝らします。恋人からの手紙を入れてはどうか。機密文書の内容は退屈な文章にした方がリアリティを増すのではないか。死体となる男性と彼の恋人はどのくらい交際して、どういう関係性なのか。死体として流れ着く架空の人物がどのような生活をしているか、人物像を練り上げていく過程が妙におもしろく、引き込まれてしまいました。私たちが日常生活で無意識のうちに行っているコミュニケーションがどのようなものかについて考えてしまったし、それを意識的に再現しようとするとどこか不自然になってしまうといったモチーフがとてもよかったです。

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