『エイリアン:ロムルス』と、2024年のエンタメのかたち
バランスよく配置されたドラマとエンタメ
『エイリアン:ロムルス』は、『エイリアン』(1979)から始まるフランチャイズの最新作です。監督は、『ドント・ブリーズ』(2016)などで知られるフェデ・アルバレス。「エイリアン」シリーズは正直なところ玉石混淆で、なぜかプレデターと戦ってみたりと、よくわからない展開もあったのですが、本作に関しては非常によく練られた、エキサイティングな構成になっていました。人間ドラマとエンタメ要素がバランスよく配置され、息つく暇もありません。主人公のサバイバルを祈りつつも、ジェットコースターのような状況の変化に翻弄されるという、理想的な映画体験になっていたかと感じます。
主人公レイン(ケイリー・スピーニー)は、日照時間ゼロの惑星で危険な鉱山作業に従事する女性。亡き父から託されたアンドロイド、アンディ(デヴィッド・ジョンソン)を大事にしながら暮らしていました。この惑星の環境はきわめて劣悪です。太陽の光を浴びて暮らせる別の星へ逃れたいと考える友人たちと一緒に、宇宙空間に放棄された宇宙施設ロムルスへ侵入し、冷凍休眠装置と脱出用ポッドを手に入れ、脱出する計画に参加した主人公。どうにかロムルスへ侵入した彼らでしたが、施設内は様子がおかしく、この施設が放棄された過程で、なにか大きな事故が起きたようだと気づくのでした。
「妊娠恐怖」への回帰
「エイリアン」が、女性の感じる妊娠への恐怖を描いたシリーズであることは、よく指摘されています。体内に寄生し、人間の身体で育ったのち、胸をつき破ってモンスターがあらわれ、宿主である人間を死に至らしめるという展開は、男性の性欲が持つ暴力性、また妊娠に対する恐怖を暗喩した物語として受け取られてきました。『エイリアン:ロムルス』は、そうした原点を踏まえた上で描かれた作品であることが明らかで、いたるところに男性性、女性性のサインが見て取れます。79年発表の1作目は、その時代のフェミニズム運動の高まりと連動していると言われますが、主人公の女性の生存をかけた戦いを追った本作にも、同じようなメッセージを感じました。2024年に公開される映画として求められる、現代性を備えているのが特徴ではないでしょうか。
とはいえ、本作は徹底したエンタメでもあります。限られた時間、脱出に必要な燃料の確保、エイリアンに襲われて失われていく仲間、謎めいたアンドロイドの存在、隠された計画。こうしたプロットが緊張感をもって絡み合っていく展開はみごとで、まったく弛緩しないままエンディングまでなだれ込んでいく構成に驚きました。メッセージ性を備えたドラマと、明快なエンタメが共存しています。また、映画のビジュアルが全体的に美しく、迫力があるのも見どころでした。誰も助けの来ない孤独な宇宙空間で、恐ろしい敵を相手に奮闘している姿がドラマティックに描かれます。エンドクレジットで思わず拍手したくなるような、しっかりした娯楽作品だと感じました。
【エンタメを頑張ろうと思って書いた、美容エンタメ本です】