『レッド・ワン』『ロボット・ドリームズ』
『レッド・ワン』
『レッド・ワン』は、サンタが誘拐されてしまった? という設定のキッズ映画です。劇中、サンタは実在しており、北極の秘密の土地に住んでいます(『ブラック・パンサー』のワカンダのように、バリア的な何かで見えないようにしてあります)。サンタ(聖ニコラウス、通称ニック)が誘拐されるという一大事に、警護役のカラム(ドウェイン・ジョンソン)と、誘拐されたサンタの行方の手がかりを持っていそうなジャック(クリス・エヴァンス)が、協力しあってサンタ救出へ向かいます。かくして、クリスマスが無事行われるよう、サンタ救出作戦が開始されるのですが……。設定に現実味を持たせる工夫や描写も、子ども映画らしいやんちゃさでおもしろいし、サンタ役がJKシモンズというのもちょっと笑えましたね。
本作がユニークなのは、悪役が「人を処罰することに取り憑かれている」状態である点です。子ども映画は、どのようなメッセージが込められているかが大きいと思うのですが、米大統領選を見たあとでは、移民を叩き出せと血気盛んに怒っている人びとが抱く処罰感情、とにかく誰かを罰したい、人を罰するための仕組みをより効率的に作り出したい、というむき出しの感情に対するアンサーのように思えてしまいました。人を罰するのではなく寛容さを持って受け入れようというテーマは、個人的にも響くものがありました。クリス・エヴァンスのやさぐれ演技が楽しかったですね。
『ロボット・ドリームズ』
スペインとフランスの合作アニメーションですが、舞台はニューヨーク。公開前から話題になっており、さっそく見てきました。マンハッタンのアパートにひとり暮らししている犬(名前はDOG)が、孤独を解消するために通販でロボットを購入。届いたロボットを組み立てて、犬とロボットの楽しい生活が始まるのですが……というあらすじです。せりふのない作品という点が特徴で、音楽や効果音は鳴るものの、実質的には無声映画といっていい内容かと思います。アニメーションでなければ描けないニュアンスが各所に光っており、実にすばらしい作品だと感じました。
あまりあらすじを知らずに見てほしいのですが、個人的には胸の痛くなるような恋愛映画でした。描かれているのはロボットと犬の関係性であり、そこに性的なニュアンスはいっさいないのですが、ふたりの人が同じ時間をすごすことの難しさ、はかなさが描かれているように思います。誰しも基本的には「自分の時間」を生きているわけで、ある人と密接な関係を構築したいのであれば、ふたりが同じ時間を生きていけるように努力を積み重ねなければならない。そしてひとたび、ふたりが別々の時間を生き始めてしまえば、ふたたび同じ時間を生きることはできない。「同じ時間を生きている」というのは、それだけ希少で価値があることなのだと、スクリーンを眺めつつ何度も感じました。私たちは同じ時間を生きていない、という事実は、凡百のホラー映画よりも怖いように思いました。必見。
【私の本だよ、クリスマスプレゼントにどうぞ】