本当は姓名判断ができます
世間的にはあまり知られていないことだが、私は姓名判断の大家である。勉強を始めたのは25歳の頃だろうか。本を買って知識を得ようと思い、購入後しばらく部屋の隅に置いておき、表紙をじっと眺めてからあと書きを読んだ。その後の記憶はやや薄く、たぶん本文も読んだとは思うのだが、いずれにせよ言えるのは、私の姓名判断はすごく当たるということだ。とてつもなく、当たる。従ってこれを職業としてもいいのだが、あえてプロ化を避け、普段はこっそりと会社員をしている次第だ。本日は、そんな私の姓名判断の一部をみなさんにご覧いただこうと思う。
伊藤の姓名判断・男性編
「健一」はテレビゲームを発売日に買うが、ほとんど遊ばずに積んでおくことで知られる名前だ。未プレイのまま放っておき、やがてセールで安くなっているのを見かけて虚しい気持ちになるのが「健一」の特徴である。また「和彦」は10歳の頃から好きな食べものが変わらないまま中年になる。ハンバーグ、スパゲッティ、カレー、チョコレートパフェのことだけを考えて生きてきたし、これからも一生同じである。「信次」は人生の困難から逃げる傾向がある。同時に「逃げては駄目だ」と自分を戒める気持ちもあるにはあるのだが、努力するとたいてい裏目に出る。父親が苦手。向いている職業は巨大ロボットの操縦。「順」は年老いた両親が揃って上京してきた際、劇団四季『ライキンキング』のチケットを取って連れて行く親孝行な一面を持つ。「哲夫」はいつか飲み会で披露しようとひそかに準備しているモノマネのレパートリーがふたつある。
「正志」はマクドナルドよりロッテリアを好むが、彼がロッテリアを食べるのは、ドムドムが近くにないため妥協している場合が多い。「幸雄」は芸術家肌だが、激昂して灰皿を投げる習性があるので注意。「光太郎」はたまに乗る新幹線が好きで、毎回テンションが上がってしまい、駅弁やビール、おつまみなどを食べきれないほど大量に買い込み、食べ切れずに残す。「正己」は道を歩いていてキンモクセイの香りをかぐと、必ずSNSにそのことを投稿する。「陽治」は家でシャワーを浴びている途中に、かつて自分がやってしまった恥ずかしいことを急に思い出して「わーっ」となる。気持ちが落ち着くのに10分くらいかかる。「克也」は留学経験がないにもかかわらず英語が異様にうまくなり、洋楽にも詳しい。「良介」は映画『ダークナイト』の話を3時間に渡って繰り広げ、恋人から「本編より話が長い」と叱られる。
私の姓名判断のほんのさわりを見てもらった。同業者が「そんなんじゃ、こっちの商売上がったりだよ」と嘆く声が聞こえてきそうである。自分でもちょっとまずいなという気持ちになってきたので、このあたりで止めておくことにしたい。