朝日新聞に対談が掲載されました
I AM A BUNKA JIN
みなさんこんにちは、伊藤です。実は先日、人類学者の磯野真穂さんと対談した内容が、朝日新聞に掲載されました。紙の新聞ですと9月10日、電子版ですと9月6日に掲載されております。とても嬉しいです。いつも行く喫茶店の店主にじまんしたところ、こんなケーキを出してもらいました。
店主より、お祝いというより、もはやDISに近いのではという「文化人」の称号をいただき、これからはいっぱしの文化人として世間に物申していこうと決意をあらたにしました。今後は、世相を強めに斬っていこうと思います。この対談はとても意義深いものになりました。なぜかと申しますと、対談相手の磯野さんはたいへん優れた書き手でして、読者の心を揺さぶる本を何冊も書いて、数多くのファンを魅了しているすごい人だからです。
絶対読んでほしい『なぜふつうに食べられないのか』
勉強不足でたいへんお恥ずかしいのですが、対談が決まるまで、私は磯野真穂さんという著者を存じ上げませんでした。本を1冊も読まずに対談の場所へ行くのはさすがに失礼だろうと考え、ひとまず1〜2冊目を通しておこうと、私の本の編集者さんが推薦していた『ダイエット幻想』(ちくまプリマー新書)を読み始めた私は、そのまま磯野さんの本にハマってしまい、入手可能な本をすべて買って読んでしまいました。衝撃体験。なかでも私にとって重要な1冊は『なぜふつうに食べられないのか』(春秋社)でした。これは摂食障害に苦しむ女性をテーマにした本で、女性たちの話を聞き取りつつ、そこに著者の考察をくわえていく、という構成になっています。
この本は「ふつうに食事ができなくなってしまった」女性の苦しみをありありと描写しています。中学校の頃、クラスメイトに心ない言葉で体型を指摘され、その言葉のナイフが胸に刺さったまま、10年、20年と摂食障害に苦しみ続けた女性の日々。この本を読み終えた私は、自分の書いた『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』(平凡社)がどれだけのんきでお気楽であったかを思い知り、恥ずかしくなったのでした。私がこうやって明るく楽しく美容をエンジョイできているのは、私が他人に容姿をジャッジされずに生きてこれた男性だからではなかったのか、と思い知ったのです。
磯野さんとの答え合わせ
そのためこの対談は、磯野さんの本を一気に読んで本人へ会いに行く、ある種の答え合わせ、あるいは勉強会のような意味がありました。誌面には書ききれないあれこれについて話し合い、私は「男性にとって身体とは何か」という重い課題を背負って帰ることとなりました。磯野さんの本が「本気の剣道の試合」だとすれば、私の本は「海辺のスイカ割り」といった緊張感のなさがあり、その落差が情けなくもなりました。「電父」は中年男性だから書ける、実にのんきな本でした。それはそれで明るいトーンがあり、読みやすさもあって、本としては悪くないと思っているのですが、そこはひとまず措いたとしても、私はあらたな勉強の課題をもらったような気がしたのでした。
ということで、電子版の対談はまだ読めますし、紙版より内容を増やしてお届けしておりますので、目を通してもらえればと思います。結構おもしろい内容になったかな? と考えております。磯野さんとの対談、そして著書から学んだことが、今後生かせればいいなと思っています。それと「美容おじさん x 人類学者」という肩書きの並びが、かつての映画『エイリアン vs ヴァネッサ・パラディ』(2004)みたいでいいな〜と思いました。
【「電父」紙の本はないのですが、電子書籍ならあります】