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ハイラル王国、旅のしおり – 1

任天堂Switchのテレビゲーム『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』(2023)のプレイ日誌を、旅のしおりのように記録していきます。

6年、待ちました

『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』が、ついに発売された2023年5月12日。前作『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』(2017)が大好きな私は、発売延期なんかもあってうまい具合にじらされ、5月が近づくにつれてテンションも高まっていた。発売日には「おうおうっ、買ってやろうじゃないの」と前のめり状態、有楽町ビックカメラ4階へ勢いよく乗り込んだのである。お店に行くとは、すなわちソフトを買いに出かけるということ。こう書くと「あらっ、わざわざお店でゲーム買うなんて、兄さん酔狂ねえ」と思われる方もあるだろう。ここでゲームにそこまで詳しくない方へ一応お伝えすると、ダウンロードが可能となったいま、もはやゲームを買いにいかなくてもよいのである。便利な世の中になった。

もはやパッケージ版を買う理由など自分でもよくわからず、正直なところダウンロード版の方がソフトの抜き差し作業から解放されて便利だとすら思っている私。ただそれでも「物理的に何かを手にしないと、ゲームを買った気がしない」「テンションが上がらない」というぼんやりした理由だけで、パッケージ版を買いに行くことをやめられずにいたのだった。もはやファミコン世代の習性。Switchの調子が悪かったら、ソフトを手に持って息をフーフー吹きかけるかもしれないね。あはっ。手元のデバイスでピピッとやればすべてが手に入る時代に、わざわざ電車を降りて家電量販店のエスカレーターに乗って4階まで移動、右足と左足を交互に出して売り場へ前進っ、なんて原始的なことをしている自分だったが、店内の雰囲気を感じながら「あー、きてよかった」と思っていた。ティアキン発売日の有楽町ビックカメラは、さながらゼルダフェスの様相を呈していたのだ。

行列するファンの人びと

店内にはポスターや看板が並び、エスカレーターには、ゼルダやリンクといった登場人物のイラストが飾られ、モニタではゲームの映像が流れている。楽しくディスプレイされたソフト売り場のにぎやかさもいい。そしてたくさんの客がティアキンのパッケージ(家電量販店によくある、中に何も入ってないダミーの箱)を手に行列しているのが見える。ついに発売したのだ。これだよこれ、現場に行かないとわからない熱気。まだパッケージ版をほしいと思う人がこんなにいたとは。こだわってパッケージ版を買いにきてよかったと思った。なんか「買った感じ」「これからやるぞって感じ」がするんだよ。ゼルダ新作を何年も待ち、発売日に行列をなす人びと。海外の人もいるし、年齢性別もみごとにばらばらだ。そして全員が「帰ったらさっそく遊んじゃおう! 今日は思い切って夜更かしだ」という表情、小学5年生の熱き興奮、みたいな顔をしているところだけが共通している。なんだか、ここにいる全員が仲間であるような気がした。あとさ、発売日が金曜ってのもいいね。もう明日は休みで、何時まで寝ていてもいいのだ。私は店員からティアキン1本を買い求め、おまけのクリアファイルみたいなのをもらって帰途に着いた。

発売日に家電量販店へ並ぶゼルダファンたち

さてティアキンである。しかしこの略称どうなんだ、人気ユーチューバーのあだ名みたいな語感だけどそれでいいのか、といった疑問はさておき、緊張しながらソフトを入れてゲーム開始。ついにふたたび、あのハイラル王国を旅する日々がやってくるのだ。くはっ。任天堂センキュ。ちなみに「ハイラル王国」っていうのは、ゲームの舞台となる土地の名前ね。ブレワイの美しい思い出はいずれ語っていくとして、あの楽しかった前作から6年、ふたたびハイラルの地を散策できる日がくるなんて幸せだな、と思った。ゲームのオープニングは、物語設定や世界観の説明から入るのが定石。本作も同様であり、あまり手元の操作はなく、ムービー中心の作りから始まる。それにしたって、冒頭の展開から心奪われるじゃないの。ラピュタ、ナウシカ、もののけ姫と宮崎駿テイスト全開な物語設定やモチーフもいい。今回は空中滑降がポイントだと聞いてはいたが、このタイミングでタイトルクレジットか! という絶妙なポイントでのタイトル出しに、思わずテレビ画面へ向かって拍手してしまった。

歩いているだけで楽しい

ゼルダの何がいいって、このゲームはただ歩いてるだけでもう、さっそく楽しいのである。トコトコトコ……とフィールドを歩いていると、だんだん日が暮れてきたり、曇りになってきて、やがて小雨が降り出したりと、周囲が変化していく。遠くに山が見えるな、今日は晴れてて気持ちいいぞ、見たことのない鳥もいる、いま午後の3時くらいか……。そうしたゲーム内の地形、気候、時間などの変化を感じながら歩く、それが何より心地いいのである(ゲーム内には独自の時間が流れている)。6年前にブレワイをやっていたとき思ったんだけど、もう旅行なのよ、このゲーム。ハイラルという場所を旅行して、いろんな場所を観光して、写真を撮ったりたくさんの人と話したりして、「ハイラルに旅行したの、楽しかったな〜」みたいな思い出がぎゅうぎゅうに詰まった、そういう稀有なゲーム体験がブレワイであった。もう1度それができる。イェイ。任天堂センキュ。まだティアキンがどこまでおもしろいゲームかはわからないけれど、チュートリアルステージで操作方法を思い出したり、あれこれと練習しながら、あーこの感じこの感じ、早くチュートリアルを終えて本編に進みたい! と胸がときめいてしまった。

とはいえチュートリアルは難しくて、雪山で20回くらい死んだ。こんなに難しいチュートリアルあるかよ、ってちょっと思った。何より困ったのは、着る服が見つからなかったことで、しかたなく上半身裸で雪山に登り、案の定遭難して凍死しまくった。当たり前である。雪山には服を着て登ったほうがいいし、それが雪山でなくても、外を裸でうろつくのは、法律的観点から見ても問題が多い。裸で雪山に登るのはすごく愚かだなと思ったが、誰もいなかったし、服が見つからないのでそうするしかなかったのである。裸で何度も凍え死ぬ主人公リンクを見ながら「今夜出かけたいけど、着て行く服がない」というスミスの古い歌を思い出した。そして私のティアキンの旅が始まった。ついに、始まってしまったのだ。

【私の書いた本、たぶんゼルダくらいおもしろいので読んでほしいです】

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