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令和7年に読む『有閑倶楽部』 【9】
1981年から連載が開始された少女マンガ『有閑倶楽部』を1巻から読んでいきます。作者がどのようなマンガ家なのか、この作品は有名なのか、少女漫画史でどう評価をされているマンガなのかなど、まったく知りません。何の知識もない、ほぼ真っ白な状態で作品と接した感想をそのまま記録していこうと思います。
有閑倶楽部 9巻
23話。お楽しみのホラー回。いきなり結論からいいますと、ホラー部分の展開はかなりよかったものの、キーとなる女性の描写はちょっとよくなかったと思う
年老いた女性が高校生のグランマニエに恋愛感情を抱き、グランマニエの意思を考えずに迫ってくるという設定
女性に対して意地悪な描写ではないだろうか
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過去回ではルッキズム(美しくない女性から迫られる)もあったが、エイジズムも出てきてしまった。どうにも気まずさがあって楽しめない。あと、年配の男性は若い女性に対してこの手の勘違いをしょっちゅうするけど、女性はこんな間違いをほぼしないと思う
読んでいて気の毒になってしまった
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というわけで、物語のフックとなる女性の描写には共感できず
ただしこれ、一条先生だけが悪いというわけではない。世の中全体がそうだったから。当時読んだ人は何の違和感も抱いていないだろうし、「そういうもの」として受容されていた。編集者もこのあらすじでOKとしているし、連載当時はこれが普通だったはず。過去の作品に、2025年の視点からあれこれ言うのはあんまりフェアじゃないとも感じる
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孤独のあまり泣き出してしまう老いた女性。うーむ、昭和よ
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かと思えばいきなり亡くなってしまう女性。なんか読んでるこっちが申し訳なくなってくる展開だよ
ホラー映画でたくさん人が死ぬのを「ボディカウント」と呼んだりするけど、有閑倶楽部もまあまあボディカウントなんだ
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女性の死に不審さを感じた有閑倶楽部。問題の真相に迫ってゆくぞ
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年老いた女性から渡されていた人形。そこには女性の魂がこもり、グランマニエを追ってくるのだった
ここはマジで怖い。この人形描写はどれもGOOD
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そして人形に乗り移ってグランマニエを追ってくる。ひぃ〜。ホラーとしてはいいと思うけど、そもそも女性の描写に難ありなのでうまくノレない状態
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最終的には、女性の心を鎮めてあげて成仏に導き、平和なエンディングへ向かうのだが、正直ちょっとこの回は共感できずじまいであった
女の怨念、みたいな話の根幹がいまひとつ
24話。なんと「アメリカ横断ウルトラクイズ」オマージュの回。これは実によかった。私も大好きで欠かさず見ていたから
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剣菱家がスポンサーになって、ウルトラクイズの豪華版を開催、そこに有閑倶楽部が参加するという設定
80年代、すごくお金をかけて大々的に放送されていた「アメリカ横断ウルトラクイズ」という番組があって、当時のバブル景気の影響もあってか、その豪華さ、派手な盛り上がりはすごいものだった
ウルトラクイズで優勝すると有名になったし、優勝者は本を出したりしてタレント化していった。無名の出場者がいきなり有名になっていく過程など、いまでいうリアリティショー的な側面もあった気がする
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一方、有閑倶楽部では、勉強の得意な菊正宗が、他のメンバーに対して見下すような発言をしてしまい、倶楽部に亀裂が生じる展開に
このあたりの白鹿の視点はすごくフェアでいいと思った
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そんななか、クイズ大会は大盛り上がり
本家のウルトラクイズを見たことのない方に説明すると、東京の予選で勝ち抜くと、海外行きの飛行機に乗れて、うまくいけばよその国に行ける。各地でクイズ大会をして、勝ち残った参加者が次の場所へ行けるというルールがある
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途中で恒例の内輪ネタが入るのも楽しい。そしてこの回の時点で、一条先生はデビュー19年経っているという情報を得たぞ
剣菱のせりふ「これができたら成田」とは、ウルトラクイズの一次予選は後楽園球場(いまの東京ドームできる前の野球場)で行われて、そこで勝ち抜くと成田空港に場所を移して、飛行機に乗れるかどうかの選抜が行われるというルールの説明
きっと一条先生も盛り上がってウルトラクイズ見てたんだろうな
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そして香港へと移動する一行だったが、なぜか香港では麻薬や買春を勧められる。困惑する菊正宗。少女マンガでそんな展開要る?
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そしてあったね〜ばらまきクイズ。問題の書かれた紙を拾いにいかなくちゃならないやつ
私もウルトラクイズ好きだったから、いちいち反応しちゃうし、楽しい
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このマンガでは「アメリカ横断」ではないので、もう世界中どこでも行ってしまう
私はアメリカにすごく憧れがあるんだけど(過去に2回行った)、よく考えたらウルトラクイズがそのきっかけだったかもしれないと、いま気づいた
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そしてクイズの内容が80年代すぎて懐かしい。明菜のLP〜
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そして一条先生お得意の麻薬密輸。とにかく一条先生は違法薬物をストーリーに盛り込むのが大好きなんだ
有閑倶楽部に登場するちょっと怪しい雰囲気のおじさんは、だいたい麻薬を売ったり打ったりしています
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ちょっと舐めただけで阿片と判断できる高校生、菊正宗。なんでそんな特技持ってるんだ?
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そして麻薬を密売する悪人を殴っておしおきする白鹿
悪人への暴力行使が肯定されている、ジェイソン・ステイサムの映画みたいな世界観
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また、途中から参戦してきた謎の敵が、グランマニエの服をびりびりに裂くという妙な展開も登場
この女性が発散するサディズムには不思議なものがあった
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上半身の服を裂かれたグランマニエが、裸でスキーしながら逃げる、なんだかわからない図
どんな目的でこの展開を入れたのか、一条先生に聞きたい
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なんだかんだあって、悪は退治されたが、なぜか優勝者を決めるシーンまで行かずに話は終了
終わり方がやや唐突な気がした。なぜだろうか
最後はニューヨーク、自由の女神まで到達してほしかった
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9巻の感想
23話のホラー回は、女性の描写があまりよくなかったと思う
人形が追いかけてくる、というアイデアはよかっただけに残念
24話のウルトラクイズ回は、80年代感が全開で楽しかった
当時は景気もよかったから、テレビ番組も豪華だったんだよね
2025年の視点で見るとやや飲み込みにくい描写もあるが、そこは時代を考慮しつつ、おおらかな気持ちで読んでいきたい