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ポテチの美学

ポテトチップスのフレンチサラダ味が好きである。フレンチサラダは定番商品ではないので、コンビニでは年に数回置かれる程度。ポテチ業界では2軍扱いだが、私にとってはいちばん大好きな味だ。2軍メンバーでは北海道バターしょうゆ味もかなりいいが、フレンチサラダのさわやか酸味にはかなわない。私が中学生の頃は、フレンチサラダも定番で一年中置いてあったが、いつからか季節商品的な扱いに変わってしまった。早く1軍復帰してほしいと願う私である。

先日、フレンチサラダを食べたい気持ちがどうしても抑えきれず、通販でまとめ買いしてしまったのだが、そのことについては少し後悔がある。通販で買うのはちょっと大げさだ。美学の問題として、ポテチを通販で買うのは違う、という思いが自分の中にある。「たまたま寄ったコンビニで、何となく買って食べる」のがポテチとの適切な距離感であって、配達員の人が持ってきて、受領サインを書いて受け取るというのはあきらかに違うのだ。だってポテチだよ。ただのおやつを人様に玄関先までわざわざ届けに来させるなんて偉そうではないかと思って、受け取った後に恥ずかしくなってしまった。

カレー屋さんで事前に予約をするのも、自分の中では妙にテレくさい。人気店だと予約が必要な場合もあり、店側の事情として予約制にせざるを得ないのはわかるのだが、そもそもカレーは気軽に食べられる大衆的な料理で、なるべく「何となく気が向いたから食べに来ました」というすまし顔で店に入りたい。カレー屋さんにはふらっと行きたいのだ。「1週間前から、今日のお昼はここでカレー食べるって決めてました」の顔でお店に入るのは、何だか本気すぎて恥ずいし、私の美学に反するのである。また、お店の前に行列ができていて並ぶのは何の問題もないが、記帳(最初に訪問してノートに名前を書き、指定された時間にもう一度来る)になると「そこまでして食べるべきか」という気持ちになるし、予約要となると恥ずかしさはさらに増す。

いま悩んでいるのは「金ちゃんヌードル」である。徳島のメーカーが作っているカップラーメンで、西日本の限定した地域にしか売っていないというもの。とあるきっかけで知って、一度食べてみたいと思っているが、東京ではまず手に入らない。通販でなら買える。しかし、カップラーメンを配達員さんに届けさせることを考えただけで恥ずかしくなり、「ああっ」と悶えてしまう。たまたま行ったスーパーで見つける方法で買いたいが、どうすればいいか。金ちゃんヌードルとは自然に出会いたいのだ。この美学だけはどうしても捨てたくないのである。

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