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「エルピス」見るの怖いんですけど - 10
昨年話題になったテレビドラマ「エルピス ─希望、あるいは災い─」を、1話ずつ見ていきます。これが最終話です。
10話「希望と災い」
◆「スタジオのライトが好きだった」。浅川の独白。過去形
◆スタジオを破壊する村井を見ながら、どこかスッキリしている浅川
◆岸本に電話する笹岡。岸本は電話に出ない
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◆副総理のインタビュー映像を見る笹岡。「噓くさい」
◆笹岡、浅川にも電話してみるが、出ない
◆岸本宅を訪れる浅川。「お兄ちゃんはいません」「キミ、ひとりっ子だよね」
◆家にあがる浅川。たぶん、ふたりが会うの結構ひさしぶりなんじゃないか
◆村井が暴れた理由を知りたいと浅川
◆知ってどうするのか? と怒る岸本。私も岸本と同じ気持ちだよ。聞いてどうするんだっつーの
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◆報道人としては村井を尊敬しているから知りたいとマジメに語る浅川
◆「現実がどれほど厳しくても向き合うしかない、だから知りたい」
◆ニュース8の被害者報道(風俗店勤務)のこともあったし、岸本の怒りもよくわかる
◆この、岸本と浅川のあいだに貸し、借り、負い目の関係を作るのがうまいんだよ。被害者報道の件で浅川は負い目がある
◆しかしここの長澤まさみはすごくいい演技だ。すばらしい
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◆そして岸本は秘書のインタビュー音声を聴かせる
◆副総理の秘書は強姦事件の告発をしたこと、以降苦しんでいること
◆「もうやめます、今度こそ」。週刊潮流もやめちゃったのかな
◆「自分が引っ張り出した人を死なせました」。浅川は秘書が口封じに殺されたことを知らない
◆岸本は「負けです」といったが、たしかに人を殺されたら、もう何もできないよ
◆浅川食い下がる「いいの、それで?」
◆私だったら、人が死んだらもうムリだと思っちゃうな。そこから先に進めない
◆そして冤罪事件の放送をゲリラで流した、荒くれ者の浅川が戻ってきた
◆ここの長澤まさみはすごい。迫真だ。感動してしまった
◆そして秘書の「この事件を岸本さんに預けることができて、光が差したような気持ちだ」の言葉を聞く浅川
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◆この浅川と岸本の会話、友情というか、友愛に満ちた場面でよかった。恋愛関係は儚いけど、友愛はもっと強くて長続きするものだ
◆ニュース8の会議。副総理の派閥議員の強姦もみ消し事件を扱いたいという浅川。普通のテンションで提案して断られる
◆しかしもう浅川は、冤罪事件をゲリラで流した頃の目つきに戻っているので、普通にやろうとする。ここちょっと笑っちゃうくらい堂々としていた
◆上層部の許可なしで放送することについて「かんたんだよ、案外。私やったことあるもん」と笑顔でいう浅川
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◆いいね! ASAKAWA IS BACK
◆「こんなとこで自滅する必要ない」と言われ「自滅って決めつけないでよ、成功するかもしれないじゃない」と答える浅川
◆見ながら「行けっ、行け」と唱えていた私
◆どれだけ「番組が大事」「関わっている人が大事」と言っても、結局は体調を崩して、精神もボロボロになって、大量の薬を服用しなくちゃ生きていけないような状態になっていたんだから、もうやりたいようにやるしかないのだ。「でないと死ぬし、私」というのが、浅川という人物のすべてなのだ
◆いいぞ、浅川
◆ニュース8本番。浅川が強姦もみ消しの原稿を読むと宣言したため、番組スタッフは斎藤をスタジオに呼んで説得させようとしていた
◆スタッフ全員をスタジオから出して、斎藤と浅川ふたりだけになる
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◆ついに斎藤と浅川の一騎討ち。やっぱり来るか、ここで来るのか
◆斎藤、ムカつくほど弁が立つ。何だよこの妙な説得力
◆斎藤のロジックはこうだ。別に浅川のキャスター人生とか、局の責任を考えているわけではない。それはどうでもいい。このニュースを報じることで、内閣総辞職、政権交代もありうる。それはいまの日本にとってプラスではない。社会情勢が不安定ななかでこのニュースを報じれば、株価も暴落するし、諸外国からの信頼も失う。何が起こるか、予想もつかない。そのように危険なカードを切るべきではない
◆もっともらしいけど、現状維持したってどうにもならないと思うな
◆浅川の反論。病人は病名を知らされなければ治療ができない。病気なのに、明日の仕事に差し支えるからという理由で病名を知らされなければ、当人の病状はどうなるか。知らせるというカードを切った責任を自分は取れないが、知らせないというカードを切ったことの責任はどう取るのか。知らせないことは最善のカードではない
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◆斎藤の再反論。このカードは確かに最善ではない。しかし現時点において浅川のカードよりはマシだ。だから時間がほしい。自分にしかるべき力がついたら、今日浅川が言ったことに必ず答えてみせる
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◆浅川の提案。強姦もみ消し時間を取り下げる代わりに、本城彰を逮捕させてほしい。本城彰に関する報道の邪魔をしないこと。警察が逮捕に動くのを止めないと約束せよ
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◆斎藤、副総理に電話。浅川の要求について話し、強姦事件に関する報道を止めるのと引き換えに、本城彰の逮捕を認める
◆今夜のトップニュースで出すようにと斎藤の返答。でないと浅川は「明日以降、事故か病気でテレビに出れなくなる」と物騒なことをいう斎藤
◆ふたりは握手をして別れる
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◆いやすごい対決だった。鈴木亮平の説得も迫真だった。このふたりが元恋人どうしってのが、また悲しいんだよな
◆これが勝利だったのか、妥協だったのか。それも判断が難しいところだけれど、ずっと追ってきた冤罪事件の報道ができるようになった
◆浅川、岸本に連絡。本城彰に関する映像資料がほしいという
◆岸本から映像を受け取った浅川、これを今日のトップニュースで流すと伝える
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◆岸本がみんなに電話をかける。チェリーさん、被害者女性の姉、嘘の証言をした男性の元妻、去年殺された被害者の母親、木村弁護士、笹岡
◆そして真実は報道された
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◆ようやく明るみに出た真実
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◆番組終了後、岸本と浅川、連れ立って牛丼を食べにきた
◆牛丼が食べられるというのは、浅川の完全復活だ
◆おいしそうに牛丼を食べるふたり、紅しょうがも入れるぞ。フライデーボンボンという紅しょうがを作っていたふたりが、ついに牛丼そのものを作って世の中に提供したのだ
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◆この質素な牛丼屋で幕を閉じるのがすばらしい
◆浅川はニュース8のキャスターを続け、村井と岸本は一緒に会社を作って働き始めた
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◆チェリーさんはカレーを作って松本さんにふるまい、出所を祝っていた
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◆これでエンディング。いやー、そうか。これで終わるのか。みんな、これからも生きていくのだ
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10話の感想
◆勝利したのか、妥協したのか、迷ってしまうようなエンディングではあったけれど、「一矢報いる」ことはできた
◆理想と現実、どのあたりに自分を位置させるか? はすごく難しい問題だけれど、自分が位置している場所がおかしいと、生きていて苦しくなってきてしまうし、ほどよい位置は意外と自然にわかってくるのかもしれない
◆浅川と岸本は鏡のような存在で、ある意味似ているような気がした。そこがよかった。共闘した仲間だ
◆完全勝利なんてないし、栄光もないけど、その場でできる限りのことをするしかないんだなと思った
◆牛丼、カレーと、日常的な食事で締めくくられるのもよかった
◆よりよく生きていくには、どうすればいいんだろうか? そんな答えの出ないことを、ずっと考えてしまった全10話だった