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令和7年に読む『有閑倶楽部』 【5】
1981年から連載が開始された少女マンガ『有閑倶楽部』を1巻から読んでいきます。作者がどのようなマンガ家なのか、この作品は有名なのか、少女漫画史でどう評価をされているマンガなのかなど、まったく知りません。何の知識もない、ほぼ真っ白な状態で作品と接した感想をそのまま記録していこうと思います。
有閑倶楽部 5巻
15話「犬猫まるごとHOWマッチ」。剣菱の飼い猫、タマとフク、そして飼い犬の男山(そういう名前です)が誘拐され、身代金が要求されるという回。その額なんと1億円
この金額のムダなデカさに「こち亀」っぽさを感じる私。やはり有閑倶楽部は、女の子向けのこち亀なのか…
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なぜか犬、猫に水泳を訓練させようとする剣菱。逃げまどう動物
猫の表情がマンガ的でかわいいね
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動物誘拐モノという新ジャンルが展開されています。剣菱(子)の必死の説得で、1億の支払いを了承した剣菱(父)。お金持ちなので1億は大したことありません
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そして松竹梅(父)も現れて捜査開始。恒例のドタバタ喜劇になっていきます
剣菱(父)と松竹梅(父)が「恐妻家」という点で理解を深めるコマ。う〜ん、これぞホモソーシャル。イヴ・セジウィックの言う通りだよ
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ここから身代金の受け渡しシーンへ。お得意のアクションシークエンスも挟みつつ、大暴れが始まるぞ
前回も出てきたミニヘリコプターみたいなオリジナルの乗り物がまた登場。どうやら気に入っているらしい
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よく考えたら男山は誘拐2回めではないか。こんなにさらわれる犬かわいそうだよ
そしてまたしても恒例の剣菱による格闘シーン。蹴りが強い、そして足の上がる角度が高い
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ここからまたひと波乱、ふた波乱あって、犬と猫は戻ってきた。有閑倶楽部が危機を救ってエンディング。この回も「こち亀」っぽくてよかったな
16話。「欧羅巴トラブルツアーの巻」。聖プレジデント高校の修学旅行。飛行機を貸し切ってヨーロッパツアー。お金持ちだなァ〜
イタリアへ向かった一行。旅先で謎の男性にカセットテープを渡される剣菱
どこへ行っても平穏無事には済まない有閑倶楽部であった
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その後、美術館にあった灰皿らしき何かを、誰でも持っていっていいサービス品と思って持ち帰った剣菱、それが実は貴重な骨董品であることを周囲から指摘されて大あわて
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仕方なく美術館へ夜中に侵入して皿を戻そうとするが、見つかってしまう。有閑倶楽部、ちょっと不法侵入しすぎな気がするな
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ここで盗品を売りさばく秘密組織の存在を知った有閑倶楽部。この悪の組織を壊滅させないと、剣菱が美術品ドロボウとして捕まってしまう
それはそうと、この回の剣菱もおっちょこちょいがすぎると思った
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気がつけばバチカンの腐敗にまで話が広がっているぞ。1巻読んだとき、有閑倶楽部は国家陰謀にも絡んでくるはずと予測したけど、やっぱりスケールがインフレして、バチカンまで巻き込んで展開が巨大化
剣菱がウォークマン(1979年発売)を使用しているのも時代の雰囲気が出ていてよい。当時は最高にオシャレなアイテムであった
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美術品窃盗団、バチカンの腐敗など話は雪だるま式にデカくなり、松竹梅(子)はお得意のパトカー盗みを披露
パトカーを盗んで爆走なんて、「グランドセフトオート」か有閑倶楽部くらいでしか見られないね
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ローマ法王の命を救い、みずからの疑いも晴らした有閑倶楽部。こんなに大活躍する高校生見たことないよ
そして巻末に長めの別作品「恋唄姫」。性的欲求ではち切れそうになった16歳の少年が、クラブで歌をうたう歳上の女性に惹かれる、という話。しかし、ティーンエイジャーの男の子の、あの爆発寸前みたいな性的欲求は、同年代の女の子からしてどんな風に見えるのだろうか。ティーンエイジャー(男)の性欲って、怖くすらある。そのあたりの感覚が女性の視点から描かれていてよかった。女の子の容姿に対して、心ない言葉をかけてしまうくだりがよかった。こういうことあるな〜と思いつつ、それでも相手の男の子に惹かれてしまう女の子の感情も伝わってくる。ラストの海のシーンもよい。好きな短編だ。
5巻の感想
今回はサスペンスアクションが2篇。ヨーロッパ編がスケール大きくてよかったね
ビル爆破、空中戦、格闘シーンなど、盛りだくさんのアクションで、一条先生はどんな映画が好きだったのか聞いてみたくなった。70年代アクション映画の影響はあるのか
この複数ジャンルの横断と、エンタメ爆発の活劇が、当時の女の子のあいだで愛されていたというのは新しい発見だ
まあ誰しも爆発とか好きだよね、映画でもマンガでも爆発はあった方がよい
6巻はホラー見たいな〜と願う私であった