空手(形)に魅せられて
終わってしまえばあっという間だったオリンピック。開催前からずっと気になっていたのが、新種目となった、女子の空手(形)だった。
最高難度の形『チャタンヤラクーサンクー』という演武を知り、決勝戦の動画を繰り返し再生し、その美しさ、スピード、切れにすっかり魅了されてしまった。
空手は小学生の頃、唯一自分から習いたいと思った習い事だ。
きっかけは、女性が空手をするシーンを映画で見てカッコいいと思ったからだった。奥手だった子どもの頃、無意識のうちに自分に自信をつけたかったのかも知れない。
当時、私の周りで空手を習っている女子はいなかった。空手教室が近くになかったことに加え、スポーツとは縁遠い家庭だったこともあり『空手を習いたい。』という私の希望が叶うことはなかった。
進学先の中学・高校にも空手部はなく、それなら、大人になったら習おうと思っていた。
高校生の時に近視になり、10年近く前、レーシック手術を受けた。手術前、診察にあたって下さった先生に、空手の件を打ち明けると「通常のレーシックですと、空手は一生出来なくなります。」と言われた。
格闘技用のレーシックというのが他にあり、そちらは何度も病院に通わなければならず、かなり面倒だと知った。「格闘技以外のスポーツなら、問題ないですよ。」と言われ、結局通常のレーシックを選択した。
ずっとやりたいと思っていたが、遂に空手を習うチャンスはなくなってしまった。
現在住んでいる部屋の近くに、数年前、空手教室が出来た。そこの前を通ると、時折、空手着姿の子供たちを見かける。
それは、私が憧れた、ありたかった姿だ。
叶わなかった夢を未来の子供たちに託そうと思いながら、いつも前を通り過ぎる。
清水希容選手の美しい演武を見て、久しぶりに、子どもの頃の夢を思い出した。