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君と異界の空に落つ 第2章

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浄提寺を降りて祓えの神・瑞波と共に、旅に出た耀の成長の記録。 ※BL風異界落ち神系オカルト小説です。 ※何言ってんだか分からないと思いますが、私の作品はいつもこんなです。 ※古…
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2024年11月の記事一覧

君と異界の空に落つ2 第63話

 丈弥はそんな耀を見て、お堂の方へ向かったか。先に読経を済ませるらしい、真面目さは健在だ。  彼は浄提寺(じょうだいじ)の小坊主の中で、一番上の兄さんだった。同じ歳の隼(しゅん)が取りまとめをしていたが、共に小坊主の規律を守り、まとめ役をやっていた。声を荒らげる事も無く、静かな存在だったけど、隼の圧に紛れながらも、足りない所を補っていた。  耀が今、世話になっている、この地の”お堂”は小さなものだ。地方とはいえ、貴族が避暑に来る浄提寺が大きかっただけであり、近隣の地域に比べた

君と異界の空に落つ2 第64話

 霊が視える視えないの差や状態の事を、蓋が開く、蓋を閉じる、等と表現する事がある。霊感の切り替え、つまり、視える視えないの調整を、そのように表現し、互いに理解を深めようとする気もあるか。  君は開きかけているようだから、視えずとも感じてしまうようだね、や、一旦閉じてあげたから暫くは変なものを視ずに済むだろう、等。視え過ぎて困っていた柳衣の”目”を、少しの間、閉じてくれた春人(はるひと)のように。能力が有る者はそうした事も出来るとみえて、蓋が開いた状態の、”感”の強い者の側に居

君と異界の空に落つ2 第65話

 凛とした表情で、見た事のない僧が降りて来る。  朝仕事する人々が、一人、二人と顔を上げ、あれは善持が拾った子……と、手元を疎かに眺めたか。  初めての”真面目な”姿である。善持よりもっと坊主に近い。あんな子供だっただろうか、と、思う程に”それらしい”。  子供は坂から降りて直ぐ、小さな小道へ入ったようだ。  そうして集落の奥地へと、行き先を逸れていく。  見ていた女達が、気が付き、走る。  総領の家とは別の、女総領の元へと走る。  怪しい事をされたのではたまらない、と思った