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君と異界の空に落つ 第2章

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浄提寺を降りて祓えの神・瑞波と共に、旅に出た耀の成長の記録。 ※BL風異界落ち神系オカルト小説です。 ※何言ってんだか分からないと思いますが、私の作品はいつもこんなです。 ※古…
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2024年10月の記事一覧

君と異界の空に落つ2 第60話

『うぅん……』 『女神様……!』  それも彼女の呻きで終わる。  近寄るのが怖い面々は遠巻きに見ていたが、耀は素早く側に寄り彼女を抱き起こしてやった。もうそれだけで勇気がある……と、皆に思われた事を知らずに、起こした時に、はだけた着物を、さっと直して掛けてやる。  自分が太刀で切り裂いた着物、僅かに見えた裸体は綺麗で、傷が残っていない事を脳裏に置くと、相手が強い神様で良かった、と。 『あた……! い、いたたたた……!』  耀に抱き起こされた女神は、大丈夫で御座いますか?

君と異界の空に落つ2 第61話

 予想と違う反応を見せられ、面白くなってしまって耀は笑った。  いや、瑞波……いや、瑞波。と。  気付くのが遅くない?  雰囲気を壊さぬように、黙って笑う耀である。  大人の男が自分の胸で動揺する様子を見遣る。  しかも普段はお堅い神が。こんな子供に揶揄われ、可哀想に、なんて思って、回した腕の力を強くした。  あっという間に皆、帰り、女神も奥へ下がって行った。遠慮するような事もなく、遠慮しない耀である。  神域ならば、瑞波に触れる。例え、それが別の神の領域でも、だ。  ならば

君と異界の空に落つ2 第62話

『みずは……』 『はい。お早う御座います』  落ち着いた美しい声である。天国かな? と耀は思った。  すう、と大きく息を吸い、合わせて目を開ける。  黒い天井。木目ももう見えぬ程、煤けたような古びたような、見慣れた景色が広がった。 『三日経ったぞ』  別隣から兄さんの声がする。  そうだった。丈弥(じょうや)の声だ。  そちらを向けば、懐かしい、浄提寺での顔がある。 『────って。三日……?』  どういう事……?  寝ながら静かに問うた童子だ。 『疲れたので御座