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『うぅん……』 『女神様……!』 それも彼女の呻きで終わる。 近寄るのが怖い面々は遠巻きに見ていたが、耀は素早く側に寄り彼女を抱き起こしてやった。もうそれだけで勇気がある……と、皆に思われた事を知らずに、起こした時に、はだけた着物を、さっと直して掛けてやる。 自分が太刀で切り裂いた着物、僅かに見えた裸体は綺麗で、傷が残っていない事を脳裏に置くと、相手が強い神様で良かった、と。 『あた……! い、いたたたた……!』 耀に抱き起こされた女神は、大丈夫で御座いますか?
予想と違う反応を見せられ、面白くなってしまって耀は笑った。 いや、瑞波……いや、瑞波。と。 気付くのが遅くない? 雰囲気を壊さぬように、黙って笑う耀である。 大人の男が自分の胸で動揺する様子を見遣る。 しかも普段はお堅い神が。こんな子供に揶揄われ、可哀想に、なんて思って、回した腕の力を強くした。 あっという間に皆、帰り、女神も奥へ下がって行った。遠慮するような事もなく、遠慮しない耀である。 神域ならば、瑞波に触れる。例え、それが別の神の領域でも、だ。 ならば
『みずは……』 『はい。お早う御座います』 落ち着いた美しい声である。天国かな? と耀は思った。 すう、と大きく息を吸い、合わせて目を開ける。 黒い天井。木目ももう見えぬ程、煤けたような古びたような、見慣れた景色が広がった。 『三日経ったぞ』 別隣から兄さんの声がする。 そうだった。丈弥(じょうや)の声だ。 そちらを向けば、懐かしい、浄提寺での顔がある。 『────って。三日……?』 どういう事……? 寝ながら静かに問うた童子だ。 『疲れたので御座