マガジンのカバー画像

君と異界の空に落つ 第2章

73
浄提寺を降りて祓えの神・瑞波と共に、旅に出た耀の成長の記録。 ※BL風異界落ち神系オカルト小説です。 ※何言ってんだか分からないと思いますが、私の作品はいつもこんなです。 ※古…
運営しているクリエイター

2024年9月の記事一覧

君と異界の空に落つ2 第58話

 先ほどよりも強い殺気だ。本気だ。と耀は悟った。  襖を一枚、二枚越え、その間に手を引かれた栄次は、砕けそうになった腰が戻って、耀の前を疾走していた。 『瑞波っ! 栄次を連れて先に────!』  逃げろ、と言葉を伝える前に、急襲の気配を感じ、受けの型を取った体である。柄と太刀の背に手を添えて、腰を低く受け止めた。  少し前に習った”受けの型”。子供でも重心を低くして、腹に力を入れたなら、単純な一撃ならば”受け止められる”事を習った。真面目に話を聞いて良かった。体が動いたの

君と異界の空に落つ2 第59話

 初めて出会う”大神”である。玖珠玻璃は無言でたじろいだ。  川で繋がる寺の近くだ、仲良くしている耀と瑞波が、近くの山へ動いた気配があった。夕刻を目前に栄次らしい気配も走り、珍しいなと考えて塒(ねぐら)で塒(とぐろ)を巻いていたか。そんな彼等の気配が呑まれるように消えたので、おかしい、と思った彼は急いで道を辿ってきたのだ。  此処に繋がる”道”は水路、地下水脈の一である。耀がよく行く温泉と同じ、山の下で見えない水路が繋がっている。この辺か、とあたりを付けて登ってきたが、彼等の