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ファースト・スラムダンクをネトフリで観た
まず良い点から
バスケの試合における人間の体の動きやスピード感、そして物理が正確に表現されることにより試合に立体感があること(見た目が3Dであること以上に)
漫画で読んでなんとなく知っている動きが実際に行われたらこうなるという様々な検証ができた
原作全巻とテレビアニメ版を繰り返し見てきた人間には興味深く面白く感じた
次に私から見てマイナスな点は
リョータの個人的な回想シーンは全てが感情移入しにくく、共感もできなかった
その理由のひとつはストーリー自体にあまりオリジナリティがなく深い感情表現もない
観客に感じて欲しい感動のレベルが低くて私はそこでは感動できなかった
また回想シーンのテンポが悪い
これはいくつかの批評で見た気がするが、本来井上氏が得意な試合のシーンの美しく完成された表現としてのテンポを完全にぶつ切りにして間延びさせる効果しかなかった
じつはこの手法は井上氏は漫画でよく使う手法なのだ
漫画スラムダンクでは試合の途中で回想がしばしば挿入される
漫画ではそれは絶大な効果があり、回想から戻った時に猛烈に感情が揺さぶられて感動するのだ
テレビアニメ版ではそれはうまく処理されていた
どちらかと言えば試合のシーンのテンポがかなり遅く作られており、回想シーンとのギャップがあまりなかったせいかもしれない
しかし今作では試合のシーンのテンポがほぼリアルと言えるほど早い事と、回想シーンの表現が非常に稚拙である事が相まってストーリーに感情移入できなかった
挟まれる回想シーンの時間経過と時系列がすぐに理解できず、これはいつの話?と何度も思ったのも表現が未熟であることの表れだろう
そしてもうひとつ
原作を読んだ人にとってはここまでのストーリーに様々な外せないトピックがあり、そこを経てきて初めて山王戦の面白さがあるわけで、この2時間で山王戦だけを描くのには無理がありすぎる
そのためにいろんな工夫がされている
三井のトピックを全スルーするとか
その埋め合わせのつもりなのか、中学時代の三井と宮城を出会わせるとか
(これはセカンド・スラムダンクにするつもりなのかもしれないが)
魚住を登場させないとか
しかしそれは埋め合わせにも足りていないし、なんなら原作を読んで全てを承知しているファンへの甘えにも思える
そして最後に言わずもがなだが、花道の声優が合っていない
桜木花道というとてつもなく常軌を逸したキャラに合わせる声優をもう少し吟味したほうが良かった
そして人の声には感情だけではなく知性も現れるということを知って欲しい
花道に知性の匂いがした時それは花道ではない
ディスっているのではなく、知性のかけらもないが人の胸を打つ言葉や行動が噴出するのが桜木花道というキャラの魅力なのだ
まずスラムダンクの最大の魅力である主人公のキャラ設定に失敗している時点でこの作品が成功しているとは到底言えない
見た人がこれを楽しんだかどうかは別の話で、楽しめたなら良かったしそれで興行収入も増えただろう
原作が完結しておらず、ファンはずっとその続きを見たいと思い続けていた
その願いが叶ったと感じさせる冒頭の湘北メンバーの登場シーンで歓喜するのは理解できる
ただ作品としては様々な問題を孕んでいてこの作り方が成功しているとは言えないのだ
お預けを食っていたファンがその面影を見ただけで歓喜して大騒ぎをしているのを成功と思って、2匹目のドジョウを狙うとしたらその考えは改めたほうがいい
少なくとも原作がいかに素晴らしい傑作であるかを理解しているなら、そして少しでもその原作に相応しい良い作品を作ろうという情熱があるなら、リスペクトを持って作り方を考え直すべきだ
私は初めからそれが足りていないと感じ続けている
ジョジョのアニメシリーズをずっと見ている
あの大長編をいまだに描き続けている原作者と原作への深いリスペクトはアニメの隅々にまで現れて新シリーズが出るたびにファンを深い感動に誘ってくれる
原作者も映画スタッフもそのスタンスを学んでみてはどうなのだろうか