
伝わるプレゼンの秘密:物語の力で心を動かすコミュニケーション術
はじめに:なぜ「物語」なのか
あなたは、「ヒーローズジャーニー」という言葉を聞くと、どのようなイメージが浮かびますか?
冒険や困難に立ち向かう勇敢な主人公の姿を思い浮かべるかもしれません。
しかし、この構造は物語だけでなく、ビジネスや個人の成長にも応用できる普遍的なフレームワークです。
この夏、お近づきになった、法政大学の姜教授が「戦隊モノやアニメが子どものやり抜く力=GRITを育てる!」と題して、ヒーローズジャーニーについて記した投稿に触発され、私もビジネスコミュニケーションの視点から、このストーリー構造とその力について掘り下げてみたいと思います。
ヒーローズジャーニーが与えるインパクト
ビジネスや教育の場においても、物語が持つ影響力は計り知れません。ストーリーテリングは単なる情報伝達手段に留まらず、共感や情熱、そして行動を引き起こす「力」として機能します。ヒーローズジャーニーが人々を惹きつけ、成長に導く過程を解き明かしながら、ビジネスコミュニケーションにおいてどのように活用できるか考えていきましょう。
物語=ストーリーテリングの基本構成
物語=ストーリーテリングには、人の心に深く響く基本構成があります。この構成を理解し活用することで、プレゼンやコミュニケーションがより効果的に相手に伝わるようになります。
序章:物語の始まりと現状の安定
まず「序章」では、物語の主人公や舞台背景が紹介され、現状の安定した状態が描かれます。この部分は聞き手や観客にとって、自分を投影しやすい部分であり、共感を生むための土台となります。例えば、ビジネスプレゼンであれば、現状の課題や市場の背景をここで提示すると良いでしょう。
試練:挑戦と葛藤、成長の道
次に「試練」の段階で、主人公は困難や障害に直面します。この試練は単なる障害ではなく、成長へのステップです。プレゼンで言うならば、問題を克服するための戦略やアプローチを提示する場面にあたります。聞き手は、このプロセスを通じてプレゼンターのビジョンや価値を感じ取ることができます。
クライマックス:決断と変容の瞬間
「クライマックス」では、最大の試練に挑み、決断を下す瞬間が訪れます。ここでの緊張感や期待感は、物語のエネルギーを最高潮に引き上げ、聞き手に感動や驚きをもたらします。ビジネスプレゼンであれば、提案する解決策の決定的なポイントや成果を示す場面です。
帰還:新たな自分と日常への戻り
最後に「帰還」として、変わった主人公が日常に戻り、新たな安定を築きます。この結びの部分では、行動を通じて得られた成果や今後の展望を語り、プレゼン全体に納得感を持たせます。
ヒーローズジャーニーの12ステップ
「ヒーローズジャーニー」とは、物語の中で主人公が成長し、自己を超えて新たな力を得る過程を描いた12のステップです。
ハリウッド映画でも多用される「ヒーローズジャーニー」の構成は、観る人の心を掴む秘訣です。映画で主人公が試練を乗り越え成長していく姿が描かれるように、ビジネスプレゼンやコミュニケーションにおいても、同じ構造を活かすことで聞き手の共感を引き出し、心に響くプレゼンが実現できます。映画好きな方にとっても、共通点を感じていただけるでしょう。
ヒーローズジャーニーはビジネスプレゼンにも活用できる構成ですが、面白いことに、ビジネスでよく使う「コール・トゥ・アクション(CTA)」がプレゼンの最後に来るのに対し、ヒーローズジャーニーでは物語の冒頭にあたる部分で登場します。
この違いは、ヒーローズジャーニーが主人公の成長を中心に描いているのに対し、ビジネスプレゼンは受け手に行動を促すのが目的だからです。
さらに、ビジネスプレゼンのCTAは、具体的な「次の行動を促す」もので、聞き手が「購入」や「契約」などのアクションを起こすことを目的としています。一方で、ヒーローズジャーニーにおける「コール・トゥ・アクション(CTA)」は、主人公を冒険へと誘い出し、現状の安定から一歩踏み出すための「きっかけ」としての役割が強調されています。これは、主人公にとっての「内的な変化」や「新たな可能性」を示唆するものです。
この違いから、ヒーローズジャーニーのCTAは、単に「行動を促す」というよりも「変化への誘い」としての意味合いを持ち、心理的な準備をさせる役割を担っています。ビジネスプレゼンに応用する際も、初めの段階で「現状から脱却する必要性」を提起し、聞き手に共感や問題意識を持ってもらうことが効果的です。プレゼンの最後のCTAとヒーローズジャーニーの初めのCTAをうまく組み合わせることで、最初に興味や共感を引き出し、最後に具体的な行動へと導く流れが作れるでしょう。
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