PENTAX17(ペンタックスイチナナ)いきなりガチ撮影してしまう・2日目☆モノクロフィルム撮影本番!
朝5時に天然起床。
山に来ると身体の調子が異様に良い。
東京都下がいくら(プチ)田舎で緑多めだといってもアスファルトジャングルであることに変わりない。土が多い野原が多い山の中は筆者にとってはストレスフリー。静養に2週間くらい居たい気分。⇦もっと稼がないと(涙
余談だけど確か今からn10年前、28歳の頃。建築のクリエイティブ職で就職したものの無能を感じて辞表を出してテント積んで中型バイクで北海道目指したことがあった。ほぼ予定なしの行き当たりばったりで。
初の長距離ツーリングと野宿生活。最初の1、2日は慣れるに掛かったけれど数日もすると「暗くなったら寝て日が昇ったら起きる」という自然なリズムでの生活がどんどん心身ともに回復させてくれたのを思い出します。
最近疲れているのでそんな予定を立てないような旅に出たいが、そういう余裕がほとんどないのが零細個人経営の辛いところです💦
話は戻って、山小屋の相部屋で起床だ。
相部屋は3階建ての3階…といっても三角屋根の建物の屋根裏みたいな場所で天井が高い。
天井のランプは、今の時代は流石にオイルランプではなくてLED電球になっていた。電源については今回モバイルバッテリーを持っていったので特に必要はなかったけれどコンセントはなかったような気がする。そのへんは昔の山小屋仕様のまま。落ち着く。
筆者は割とどこでも寝られる性格なのでか、布団や枕が変わってもよく眠れて爽やかに起床できた。
ちなみに会社員時代は昼飯を公園の木陰のベンチで食べてそのまま昼寝していたこともあるし、最近ではお店の2階で昼を食べてそのまま35℃くらいある部屋で昼寝する(流石に死にそうになるのでやめたいw)。
朝6時に朝食を予約しておいた。
朝食は昨日の晩と変わらず美味しい。バランスもいい。
というか食う前に撮らないのは静養な生活リズムになっているのだろう…。
お櫃のご飯が丼2杯くらいだったが完食。
相部屋で平日ということもあり、この二食付きで1万ちょっとの宿賃なのはすごくいい。ずっと居たい。というか叶うなら引っ越したいw。
6時半くらいに荷物を原付に積んでから、9時過ぎにまで駐輪させていただくことを宿に願いして徒歩で出発する。
出発前の計画中にモノクロフィルム撮影1stロール(最初の1本)はどうしようか?結構悩んだ。
イメージした被写体は薄暗い森の中の足元に生えている苔を接写してみたい。八ヶ岳の森はそれだけでも美しいが足元の苔もよく観察すると小さな世界ができていてとても美しいのです。
最初は中判カメラを三脚に据えて精細な画質で撮影しようと考えていました。中盤はフィルムサイズが大きいのでデジタルで言えば高画素、かつフィルムフォーマットが大きい(デジタルで言えばセンサーサイズが大きい)ので被写界深度が薄く撮影は難しいけれど写真にしたいイメージ幅が広がります。それを最終的にA1サイズくらいの作品にプリントしてみたいと思っていました。
中判カメラで使いやすいのはベローズが付いていて通常レンズでも接写可能なマミヤRB67です。
本来は使い慣れているPENTAX67がいいのですが、接写するにはエクステンションリングを使わなければならず、現場で脱着が面倒…などと考えていると堂々めぐりで撮影計画の結論が出ませんでした。
そこでサブで持っていくつもりだったPENTAX17が25cmまで接写できるというので、この際重くて機動性が低い中判を持ち歩くより心身ともに軽くできるPENTAX17の1台に決定しました。
PENTAX17は35mmハーフ判でフルサイズの半分を使うのでフォーマットが小さいです。レンズは25mm F3.5。35mmフルサイズで焦点距離35mmレンズに近い撮像範囲です。
フィルムサイズはデジタルで言えばAPS-Cよりちょっと大きいくらいです。
しかしながらデジタルだと撮像センサーの性能を変えるにはボディ交換しないとできないけれどフィルム機はフィルムを選択することである程度精細さをコントロールできる利点があります。
ネガフィルムには個性があって感度の低いフィルムは粒状が細かく感度が上がるほど粒状が大きくなる傾向があります。デジタル的にいえば低感度フィルムを使うとある程度画素数が上げるような効果があることになります。
特にモノクロフィルムはカラーフィルムのように粒子が三原色でなく黒点なので粒状が細かくなります。
そんなわけでモノクロ撮影は、低感度で超微粒子のモノクロフィルムを選択することにしたました。
経験上、現行販売しているモノクロ超微粒子フィルムは富士フイルムのNEOPAN ACROS II(iso100)が一般的に入手しやすく筆者のお店でも販売していたのでそれを使うことにしました。
NEOPAN ACROS IIは普通に撮影して普通に現像すると比較的軟調になりやすく、なんとなく適当に撮影するとコントラスト弱目で全体的にグレーなモノクロ写真になりやすいです。
そのまま撮影してコントラスト高めの写真を求めるならば、粒状は大きめだけどチェコ製のFOMAPAN400(iso400)が対極的で白黒はっきり出やすい傾向があります。
今回の撮影ではイメージ的にNEOPAN ACROS IIそのままの軟調イメージで撮影する気はなかったのでコントラストを上げるためにオレンジ色のモノクロ効果フィルターYA2を付けました。これを付けることにより白黒はっきりコントラストを上げる効果があります。元々軟調で階調が滑らかなフィルムなのでフィルターでコントラストを出して階調もそれなりに維持しようというイメージでした。それによって植物や苔の葉の色や明暗をきれいに撮りたいとイメージ作りをしました。
しかしここで問題なのがYA2フィルターは露出補正値2段。どういうことかというと、このフィルターを付けて適正露出を得るには2段分明るく露出設定してあげる必要があるということです。絞りだけならF8をF4にシャッター速度だけだったら1/30を1/8にという具合に露光量を増やしてあげなければなりません。その上、NEOPAN ACROS IIの粒状性能を最大限発揮するためのFUJIFILM指定の現像液であるミクロファイン現像液で現像するなら設定感度を少し落とすことも考えなくてはならないのです。露出補正-0.3か-0.7くらい。つまり更に露光が必要…
薄暗い森の樹木の根っこあたりに生えているきれいな苔を撮影するには長めのシャッター速度が必要になります。PENTAX17のレンズは絞り開放F3.5だから開放で考えても普通に1/2secや1秒以上になる計算でした。
いくらハーフ判の小さなフォーマットだとしても25cmまで近づいての接写だと被写界深度が浅くピント設定がシビアになります。このカメラは一眼レフカメラと違ってピントがファインダーで確認できない目測ピント設定。
結果、初めて使うPENTAX17の使い方のハードルが爆上がりして意外に難しい撮影になります…⇦
重い中判カメラからは解放された分、カメラと被写体の距離感などに慣れないと結果に繋げるのが難しい撮影になってしまっていました。
いろいろ考え抜いた結果(笑)、子供向け研究望遠鏡についていた超軽量三脚にカメラ(PENTAX17)を載せて、ケーブルレリーズを取り付けて撮影に挑みました。
因みにケーブルレリーズは電子レリーズなのでフィルムカメラの汎用機械式のものは使えませんがフィルム時代からあるキヤノンのEOS KISSやRシリーズ用の2.5mmプラグのもの※が普通に使えました。
※リモートスイッチ RS-60E3
・撮影中気になっていたが…
撮影中気になったことは、Pモードで撮影していてシャッターがあまり低速で切れていない音だったことでした。
カメラのスペックでシャッター速度範囲は1/350sec-4secなのですが薄暗い場所でも1sec切れてる気がしない。「この明るさってもっと遅いのでは?」と思いましたが、ついPモードの自動露出だし大丈夫なのかな?とか自動露出に甘えてそのまま撮影して回ってしまいました…
しかし撮影を完了して帰宅後、それはかなりヤバかったことが発覚しました。
・使用説明書を読み返して顔面蒼白?⇦
時間が前後しますが、帰宅後使用説明書を読み直しすとPモードのシャッター速度範囲の記載がなかったので気になってリコーイメージングさんにメールで問い合わせしてみました。
休日に問い合わせしたために何日か経って回答をいただきました。
結果、端的に書くと「Pモードの低速側シャッター速度は1/30secまででそれ以下の輝度では低速プログラムモードを使用せよ」とのことでした。
しかし回答いただいたその時すでに撮影したフィルムの現像処理が終わり定着処理に入る間際でした。
OH!迷子!w⇦ヤベェw
でもまぁ、もう現像済んだから現像結果を見るしかない。
結果はこの後に掲載した写真になります。
現像処理についていろいろ試行錯誤した結果、思ったよりいい結果に繋げることができました。
フィルム現像方法やデータは文末に改めて書きますのでご興味がある方は参考にしてください。
モノクロフィルム1本目、こんな感じです。
この写真はPENTAX17の推奨設定での撮影ではないので、普通の使い方で撮る参考にはならないかもしれません。
実際、iso100のFUJIFILM NEOPAN ACROS IIで2段マイナス補正が掛かるYA2フィルターを使用してPモードにて暗所も明所も撮影してるので、そのまま通常現像したら明所の写真以外は真っ暗でほとんど写っていないと思います。
薄暗い森の樹木の根本に生えてる苔に対してPモードで一番明るい露出設定はF3.5で1/30secなのでほとんどはその設定でシャッターが降りているはずです。それをフィルター露出補正換算iso25で撮影してしまったのですから😅
ただ、拙い経験値で自分の考えられる範疇で現像処理を試した結果、上記の仕上がりになりました。
筆者的には、満足です。
撮影が終わって小屋に戻ってお土産を買い、原付に跨り発進しました。
標高2,000m超えで気圧が低いメルヘン街道(国道299号線)も下りならば適度な速度で原付も走ります。ただ基本キャブレターの小排気量車はエンジンには力が出ないのでスロットルレスポンスも悪く、上り勾配になると減速します。その上、長野の山道は東京や埼玉の秩父の道とコーナーの設計が違いますので慣れないとRが大きいのに回り込んでいるコーナリング中にビビってしまい転けそうになります。そういう時は自分の「ビビるんじゃねぇ!落ち着け!」と喝を入れて普段通りのコンセントレーションを取り戻しますw。
しかし標高が低くなるごとに気温が上がっていきます。
小海線沿線の道路に出る頃には、夏に戻ってました。それでも東京より涼しいはずです。
十石峠の入り口の出光(昔はシェル)でハイオク満タン給油して隣のローソンで地酒の紙パック1升買って背負い、原付の全力でノンストップで走り抜け、ガソリンスタンド10:15給油で約3時間13時に秩父横瀬の道の駅果樹園あしがくぼに到着。昼飯に横瀬ラーメン大盛りを食べました。
にしても暑い!
小鹿野あたりから耐え難い暑さ!秩父駅あたりでお祭り渋滞!原付でタヒぬw
国道299号線再び山を登り山伏峠や名栗、小沢峠、青梅の成木峠はまだ涼しいのですが岩倉街道以降は再び暑さ地獄w。とにかくできるだけ頑張って帰宅してすぐにシャワーを浴びました。
あぁ、八ヶ岳に住みたい…
せめて来年の夏も行きたいなぁ…
【付録 今回のモノクロ現像】
・予測現像
帰宅後にPENTAX17のレンズ上に付いてる受光素子を指で塞ぐなどして暗所設定にしてシャッターを切ってみるとやはりロングシャッターは切れない。実感1/15secか遅くても1/8secくらいだ。
だとして今回の撮影環境を計算すると全部露出アンダーだよ!w
それもたぶん2段くらいw w w!
その後、あーでもないこーでもないと脳内一人会議を開催して、拙い経験をフル活用してなんとかこの露出アンダー未現像フィルムを救う現像方法をイメージしまくるのでしたw
・必要な作業
2段以上増感
増感すると失われがちな階調をできるだけ出す方法
それをイメージして方法を考える。
導き出した結果はKODAKのモノクロフィルム現像液T-MAX developerを使って増感現像。調べても2段以上のデータが見つからないので自前で調整。
T-MAX developer 1原液:4水
液温20℃
現像時間13分
結果、奇跡的に9割のコマが救われました。
しかし、実際スローシャッターは1/30secだったので実際は予想よりもっとアンダーだったはずですね。
T-MAX developerは経験的に現像力が強めでかつハイライトが落ちにくいのでこの現像液を使ってみました。通常の現像データもこの現像液を使うと例えばiso400のコダックのモノクロフィルムを現像した場合、iso400とiso800のデータが同じという感じでなので通常現像で暗部のディティールが出やすい現像液のようです。そうなると軟調に仕上がるかといえば、割とシャープでバランスもいい印象でした。特に増感現像する時は暗部が潰れにくくコントラストが高くなりすぎないのでライブハウスなどの比較的暗所で明暗が激しい環境で撮影して増感現像する場合に気に入っていました。
ただ、この現像液は、国内のモノクロ現像ニーズの低迷で輸入代理店が販売を中止して日本国内で入手が困難になっているのが残念です。アメリカのバイヤーに直接発注できれば入手できるかもしれません。
今回使用した原液はかなり使用期限を超過(2020年使用期限)したものが200cc残っていたので1Lの現像液を作りましたが、この現像液は使用期限を超過しても割と普通に現像できるのもいいところです。
モノクロフィルムについて自家現像を覚えると、このように撮影した後に調整できたり、現像方法込みの仕上がりをイメージした撮影により創作できたりもします。例えばもっと滑らかな階調を得るのに現像液を希釈して現像時間を長くするとか、撮影時にフィルム感度より低い感度設定で撮影して現像液の濃度や現像時間を調整して減感現像するとかで標準の撮影と違う結果を得るなど、イメージした作品創作に向けて探究する楽しみもあります。
筆者のお店でもモノクロ現像体験ワークショップを随時開催いたしますのでお気軽にお問い合わせください。
2024.8.12 カメラのヤマヤ 店主 浅野 毅