リサイクルショップなどでフィルムカメラを買うということ sono2 整備編
前回からちょっと時間が経ってしまいましたが、時間ができたので整備してみようと思います。
まず裏蓋を開き劣化して汚れたスポンジ状の遮光モルトを掃除します。「スポンジ状」といっても硬化して黴びて粉体化しているので、楊子や竹串などアルミ製の部品に傷を付けにくい道具で隅々までそぎ落としていきます。
テーブルが汚れるので紙などを敷いて作業することをお勧めします。歯ブラシなどを使うのもいいです。最初にこのクリーニング作業をやっておかないと分解メンテナンス時にこのモルトの粉体が機械歯車やシャッター機構に入り込んで更に状態が悪化する可能性があります。
次に貼り革を剥がします。アルコールを化粧品調合用のスポイトで革と金属ボディの隙間に垂らして接着剤を軟化させて剥がします。
今回、貼り革を張り替えてリニューアルする予定なので裏蓋の貼り革も剥がします。
剥がしたらアルコールで残った接着剤をきれいに拭き取ります。
次に、レンズ銘板が止まっているリングをカニ目回しという特殊工具を使って回し、銘板を外します。銘板に自動露出を司る受光センサー(cds)が付いているので、半田ごてを使い配線を外します。
その次に、指標板を外し、レンズをフォーカスリングに固定している部品を外してレンズを外します。
レンズを外すときは、その位置関係を記録して取り付けの時その位置を正確に戻さないとピントがずれてピンぼけのカメラになってしまうので注意が必要です。レンズを外したら表裏ともカビが発生していたのでレンズクリーナーなどを使ってきれいにクリーニングしました。このレンズはユニットになっていて、時にはその内部にもカビが侵入している場合もあるので、その場合はユニットを分解してクリーニングする必要があります。
今回は、ユニット内部は大丈夫でした。コーティング表面をカビが多少浸食していましたが、撮影上大幅に問題にならない程度にクリーニングできました。
トップカバーを外します。
こういった部品を外すための工具は、市販されているモノもありますが、なかなかぴったり合うモノが少ないので安い工具を自分で加工して自作したりもします。ドライバーなどは、旧いカメラに使われているマイナスねじの形が今の工具では刃の厚みと幅がまるで合わないので希少なねじを痛めないためにも自分でドライバーを加工して合うモノを作ります。
ボトムカバーを外します。
汚い。電池が液漏れした痕があります。とりあえず電池ボックスを外してクリーニングを・・・
レンズボードを外します。電池ケースを外した時点で配線が腐食して断線していました。シャッターユニットが収まるボードの前面に電池が液漏れして腐食しています。幸いシャッター機構まで腐食していませんでした。
しかし、腐食断線か。フィルムカメラで写真を撮り始めようと夢見て、このカメラを買ってしまったのが何も知らない普通の人だったら・・・。と考えるとカメラ屋としては、どうにもやりきれない想いになります。正直この状態ではフィルム詰めて撮影しても写真が写るとは言えません。
電池が液漏れして配線が腐食している場合、配線自体も内部腐食します。だから配線も新しい特殊サイズの配線材(細いもの)で引き直します。
シャッターユニットを外すとボディとの間にも遮光モルト材が使われていて、当たり前のように劣化しているのできれいにクリーニングして貼り替えます。ここを放置すると劣化したモルト材がシャッター機構に混入して故障の原因になります。
モルトやカビの状態からこのカメラは20年以上使われず放置されてきたと想像できます。潤滑油が揮発しているため、シャッターもゆっくり切れるくらいです。カメラ専用の揮発しにくく年度変化が少ない特殊なオイルを希釈して必要な部分のみ注入します。ここで潤滑してはいけないシャッター羽根部分などに注油すると作動不良になりますし、油を付けすぎるとその粘性から作動不良が起きます。逆に少なすぎると何年か後に油ぎれの症状が再発します。とはいえ今のデジタルカメラの製品寿命が6~10年ほどだとしたらそんなにすぐの再発ともいえないのかもしれません。
ファインダー内部もカビで曇っていたので分解清掃しました。内面反射しにくく見やすいように工夫されています。このカメラはレンジファインダーではなく目測ピントなのでファインダーはシンプルです。
新しい配線材で電池ボックスに半田付けして自動露出機構のテストをしてみます。問題なく動作しているので修理可能だと思われます。電池ボックスの電極が腐食していなかったのは幸いです。腐食痕はできるだけクリーニングしました。
こんな感じでこんなハズレ商品を掴んでしまうと不幸きわまりないです。フィルムカメラなんてやっぱり写らないじゃん、と思われてしまうのも悲しいです。なのでカメラは最低限専門店で購入することをお勧めします。
初めてのフィルムカメラは、お店の人とよくお話ししてちゃんと動作するものをお買い求めください。
・追伸
このカメラは現在(2019.9)テスト撮影しています。問題なければ外装貼り革もきれいに貼り替えてお店にて販売する予定です。お気軽にお問い合わせください。