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思い出デジカメ『陸上自衛隊総合火力演習レポート』

『平成20年度富士総合火力演習取材』

 平成20年度富士総合火力演習を今回は皆様にお伝えいたします。
 今年の総火演本番とも言える3日間はとんでもねえ大雨が当地を襲い多少のプログラムの変更があったと聞きました。
 この日は私、大人の事情で現地入り出来ず、その前に行われるプレ演習というか本番さながらの本番というか関係者のみに許された日程で今日は取材させていただきましたので「ちょっと違ったんじゃねえ」とか「ソレってやったの?」等々お気づきの点などくれぐれも気がつきませぬように。
 では天候が急変するこの総合火力演習にお出かけの際に欠かすことの出来ない準備をまずお話ししましょう。
 最近、急な夕立、ゲリラな豪雨が話題になっておりますが、ここ富士山麓も天候の急変という点では相当な実力をもっております。
 地元御殿場では「乙女心と富士の空」と言われているとかいないとかぐらい天候が豹変する富士山麓。
 そこで快適な観覧をするための心得を五七調で一句。
「まず雨具、水に食い物、あとカメラ」
濡れて、ひもじい思いをしながら震える事なく過ごせればこの季節の野外は快適。
そこでおすすめの雨具はポンチョ。
 軽いわすぐ被れるわ値段が安いわの良いことずくめの雨具ポンチョは、とくに斜面など歩いたり作業などせず、雨をじっと耐えるだけならオススメの雨具ですからぜひ用意したほうがいいですよ。
 ポリエステル1枚の生地より2レイヤーの物のほうが耐水性があります。
あとは売店で飲み物買って戦車まんじゅう頬張りながらカメラ下げてれば完璧。雨音も心地よく観覧できます。


 さて、この総合火力演習には富士教導団本部付隊、普通化教導連隊、特科教導隊、戦車教導隊、偵察教導隊、教育支援施設隊、航空学校などありとあらゆる職務の隊員・装備が参加し、陸上自衛隊が戦闘を行う際には使用するであろうほぼ全ての武器がこの演習で見る事ができます。
 報道陣だって見たいもんだからのべ144社(陸上自衛隊発表)が取材に訪れました。
 私もそのひとりとしてうっとりとして眺めておりましたところ・・・
「大砲の発射時にはたいへん大きな音がします。小さなお子様が泣き出したり・・・」(場内アナウンス)
 そうかい、こちとら百戦錬磨のプロのカメラマン。多少の音・・・
 どどどーん!(90式戦車3台のつるべ撃ち)


 ああびっくりした。
 オレが泣き出すかと思ったよ。
 なんて具合に取材してますとカメラマンスペースになにやらBDUを着たマニアが・・・あ、本物か。
 ホンモノの合衆国海兵隊員がトゥー名、レディが一人とヤローが一人、世界に名だたる我が国製造のビデオと三脚を携えて視察に。イッツアソニー。
 彼らも間近で戦車砲の発射を聞いて「OH!びっくらしたYo!」なんて顔してましたぜ。海兵隊にはでっかい大砲はないのかもね。
 やあうらやましいだろう90式戦車。

 そんな合衆国海兵隊のどキドニーを抜くような戦車の発射音でありますが、やはり戦車砲の魅力と威力はその初速にあると思うのであります。
 発砲と同時にもう1000メートルは飛んでいるように見え、「ぁ」という間に着弾します。
 よって当然のことながら発射は一瞬の出来事であり、しかるに雑誌で気軽に見れる「戦車砲発射の瞬間」なんてものを撮影するのは至難の技なのであります。
 
 では、演習の進行具合をかいつまんでご説明いたします。
 まず特科の99式SP、FH70、203mm自走りゅう弾砲が遠距離火力として展示射撃開始。



「弾着・・・今!」で空に富士山が描かれるりゅう弾アート。ちょっぴり雲で隠れましたが。
 航空火力は悪天候で中止、代わりに仕掛け爆弾が天を焦がす勢いで炸裂。
 中距離火力としてジープ、高機動車に牽かれて81ミリ迫撃砲、120ミリ迫撃砲が布陣。79式対舟艇対戦車誘導弾、96式多目的誘導弾システム、87式対戦車誘導弾も飛び交っててこのあたりはうろ覚え。シューとミサイルが飛び出て標的にズバンと当たるスゴイ奴がいるなあぐらいの記憶でゴメン。
 近距離火力の「指向性散弾」の展示ではなんとなく向こうの野原がババババッっとなってその辺がエライことになったなあという感想。





 で、普通化火力がUH-1、軽装甲機動車、89式装甲戦闘車、96式装輪装甲車でやってきて思う存分にあたりを掃討。
 中でも今年初めて公開の対人狙撃銃の展示射撃では500mはなれた人的中央の皿を極大射程。
 ボルトアクションライフルでターゲットを見事ネイルしてくれました。オレはこういうのがホントは好きなんだ。
 今どきボルトアクションライフルかよ、って思う奴はS・ハンターのスワガーシリーズを一度読め。繰り返し読め。諳んじるほど読め。
 するとすっかりボルトアクションライフル信奉者になれっから。
 で、戦車火力では90式戦車の行進射撃、74式戦車の稜線進出射撃などに魅了され、大砲コンサートを挟んで演習後段へ。
 OH-1ヘリコプターが偵察したあとにUH-1がバイク部隊を空輸、AH-1Sの制圧射撃って怖ええな。あ、ヘリからのリペリング降下だ、アレもおっかねえな・・・なんて思っているうちにバイク部隊の強行突破。ジャンプ台から3連ジャンプを見せる日の丸オート隊。万歳。
 めくるめく射撃に身もだえの攻撃シーンでありました。
(昼の部終了、総員退場。しばし休息。御殿場の温泉は効くなあ)


 さあ、富士山に夜の帳が落ち始めた19時30分からは夜間の部の始まりであります。
 墨を溶いたような闇の中、74式戦車がライトも付けずに粛々と集合。合図で投光器を点灯し遥か標的を照らしだします。これが明るいのなんのって。
 たとえ弾薬尽きてもはやこれまでの危機一髪状態になっても・・・
 ・・・投光器ピカー!
「ふがぁー!目が、目がぁ!」
 と、なるぐらいの強力光線でありました。
 さあ今度は闇の中で小銃班は暗視装置を用いて確実に標的を射抜いております。現代の闇夜の鉄砲恐るべし。
 暗視装置を用いた74式戦車の戦車砲、機関銃の射撃が続き87ATMも闇を切り裂きます。
 その後、81ミリ迫撃砲、120ミリ迫撃砲から打ち出された照明弾に戦車が照らし出され、ゆらぐ明かりを頼りに戦車が発砲。
 美しく迫力に満ちた幻想的な景色に見とれちゃって老若男女紳士淑女善男善女が歓声喝采。いいぞ、もっと撃て。
 もし彼女にプロポーズするのならぜひこのシーンで。
 照明弾が消えた後には無照明下の砲迫射撃、初弾一斉射で凄まじい対機甲突撃破砕射撃を行ったあと各戦車、装甲車、小銃班がトドメの対徒歩兵突撃 破砕射撃を10秒間続けてイリュージョンにフィナーレでありました。


悪天候の為、中止になったF-2による航空攻撃の代わりに用意の爆弾を爆発!幕開けに相応しい派手な爆発でありました。


キノコ雲を背景に進出する大径のラグタイヤがキュートな82式指揮通信車。背景の大型モニターが余分ですなあ。以後気をつけます。


ギリースーツを身にまとい対人狙撃銃を手に「早くお客さんに見せなくちゃ!」と、ひた走るスナイパー。調整式のストックとハリスバイポッドがイカしている。


CH47からスリングでぶら下げられ離脱中の小銃班。
どうかご無事で健やかに離脱出来ますように!


右側二人がスナイパーとスポッター。スナイパーはすでにバイポットを起こして、スポッターはスポッティングスコープとケースを抱えている。青ヘルと赤ヘルは合図係り。


ヘリボン攻撃にかかるUH-60二機とCH-47。後方ではAH-1Sが援護射撃を繰り返していた。


リペリング降下


で、コレがさらにおっかないファストロープ降下。カラビナなんて使いません。己の手足が頼みの速攻強襲。映画ブラックホークダウンのアレです。
あたしも一度訓練で経験したことがあるのですが、コツは胸の前でロープをつかむこと。


空車重量4.5トンの軽装甲機動車をぶら下げながら飛来した戦場の力持ちCH-47。


華麗なジャンプシーンで観客を魅了した偵察オート隊。ジャンプ台の下には「皆は鳥」「サオ立厳禁」などのおまじないがあった。
そんなところが微笑ましいヤオヨロズの国ジャパン。
極秘。願掛けマスコット。


発煙弾の一斉発射。


標的に向け35ミリ機関砲を発射する89式装甲戦闘車。軽やかに動き回る軽快さが売りの10人乗りの装甲車。7人の戦闘員が銃眼孔から小銃攻撃もできます。

 

横からはちっちゃい戦車に見える89式装甲戦闘車。しかし35ミリ機関砲を舐めるなよ、と連続発射。


中距離火力120ミリ迫撃砲の発射。願わくばもっと近くで撃ってくれるとこちらとしては大変助かるのですが。
89式装甲戦闘車から発射される79式対舟艇対戦車誘導弾。


結構大きな弾頭なのですね79式対舟艇対戦車誘導弾。


84ミリ無反動砲2門によるりゅう弾の着弾。この84ミリ無反動砲はりゅう弾、対戦車りゅう弾、発煙弾、照明弾と撃ち分けられる便利なヤツだそうです。


対戦車ヘリAH-1Sによる対戦車ミサイルの発射。


でっかいロケット花火みたいな対戦車ミサイル。どこまでも飛んで行く戦車キラー。



凄まじい火力の90式戦車。横行行進で走行しながらの戦車砲発射に圧倒されます。
まさに陸戦の王者の迫力。
ここでしか聞けないと思われる大砲と音楽隊のコラボ。それにしても大砲と楽器のコラボとは・・・やがて対戦車ミサイルや機関砲も参加して、ぜひフルオーケストラに。


夜間演習では漆黒の闇を貫く90式戦車の発射炎が美しい。
81ミリ迫撃砲の照明弾に戦車のシルエットが浮かび上がる壮大かつ幻想的なシーン。必見です。

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