Silly season
あるフォトグラファーのポッドキャストを聴いていたら、馴染みのある言葉が出てきた。表題のことなのだけれど、最初に聞いた20年近く前のことを思い出した。
通信社のストリンガーをしていたころ、平日の毎朝朝8時過ぎに年配(と言っても今の私くらいの年齢か)デスクに電話をかけるのが日課だった。ストリンガーというのはフリーランスの立場でスタッフと同じ仕事をするフォトグラファーのこと。当然何の保証もない。言ってみれば酒屋の御用聞きよろしく「何か仕事はありませんか」と朝電話をかけるわけだ。
しかしほとんどの場合何もない。フォトグラファーを出す撮影があれば、当然スタッフから声をかけ、次に契約フォトグラファー、最後にストリンガーとかインターンに声がかかる。例外があるとすれば急な仕事、つまり事件の発生とか、スタッフや契約フォトグラファーが病気になった場合。または早朝や深夜など、スタッフを疲弊させたくない場合などもある。ボイラーの修理で家にいる必要があるとか、局部的な雪で家から車が出せないといった、ちょっと珍しい理由で急遽代役となったこともあった。
話はそれたが、ストリンガーにとって一際仕事が少なくなるのが、1月と8月だった。日本でもニッパチとか言って2月と8月は動きが少ない時節だったように思うが、イギリスではちょっとズレているようだ。これは日本の正月休みがこちらのクリスマスのようなもので、こちらの方がちょっと静かになるのが早く、また早く再開する。8月はスタッフが長期の休みを取ったりすることもあるので、急に忙しくなることもあるけれど、1月は静かなことが多い。そこで1月ごろを「silly season」と言ったりするわけだ。
冒頭に触れた在英のフォトグラファーも狭い業界ではそれなりに知られた人たちだが、フリーランスだけに仕事の減る時期のようだ。筆者自身も依頼仕事は減って家庭内でも肩身の狭い思いをしてきたが、ここにきていくつか声がかかるようになってきた。家計的には焼け石に水だが、やはり気分は違う。
そうこうするうちにもうすぐ2月だ。