批評文を突然書こうと思ったオタクが参考に読んだ本3選
はじめに
40回も同じ映画を見ることになるとは思いませんでした。
昨夏に『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(以下、劇ス)を初めて見て以来、映画館に足しげく通い、気づいたら鑑賞回数がすごいことになっていました。
良い作品というのは創作意欲を掻き立てますね。確かに二次創作欲も沸きまくりなのですが、劇スに関してはもっとこの作品自体を語りたいという思いがずっとありました。そんな時に劇ス卒論合同(@starlight_paper)なる企画があることを知り、考察、感想文なんでも歓迎との文句に、気がついたら参加を決めておりました。
しかし、いざ書き始めようとすると、まあ論文・レポートは多少の経験があるとはいえ、感想文なんて高校生以来だし、ブログなんかでよく考察文は読んでるけどあんな文章が書ける気がしねえ……と全然筆が進まない。こういう時はとりあえず世の中にある型を参考にするか、とりあえず批評論という分野が参考になりそうだ。
というわけで前置きが長くなりましたが、記事タイトルの通り作品に関して、何か文章を書こうと思った人間がとりあえず批評論に関して読んでみた本を忘備録的にまとめておきます。手に入りやすいライトな入門書ばかりですが、私もへーと思いながら読んでいたので、作品語りたいオタクの参考になれば。
1. 北村紗衣『批評の教室』筑摩書房
本屋で平積みにされていたので読みましたが、とりあえず作品に関して何か文章を書きたい人はこれを読んでおけばいいと思います。特徴的なのはとにかく文章を「書きたい」という人のための、非常に実践的な内容になっていること。
主に「精読」「分析」「執筆」の3部から成るこの本は、作品のどこをどのように見ればいいのか、読み取った要素をどのように整理すればいいのか、じゃあ実際どのように文を書けばいいのかを実例付きで丁寧に示してくれます。いわば批評を書くためのハウツー本になっていて、ここで示される流れに沿えばある程度の文章は書けると思います。
取り上げられている例も最近の洋画が多く(あとは著者の専門であるシェイクスピアが多い)とっつきやすい内容になっています。しかし、紹介される手法はかなり汎用的なので小説であれ、映画であれ色んなメディア批評に応用が利く内容だと思います。
新書かつ読みやすい文章なので、数時間もあれば読めてしまいました。
2. 小林真大『「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門』小鳥遊書房
1はとにかく実践に寄った内容になっているので、いわゆる「批評理論」的な部分はそこまで触れられているわけではありません。じゃあ批評理論ってどうなっているのか、ちょっと詳しく知りたいぜというわけで読んだのがこちらの本になります。
作家論からメディア論まで、批評論の歴史の流れと共に、6つの文学批評理論について紹介されています。学問的な部分についていえば「高校・大学から始める」とのタイトル通り、かなり平易になっていてわかりやすい反面、多少物足りない感はあるかもしれません。しかしざっくり批評論の流れが学べ、入り口としてはいいと思います。
内容は文学についての批評論の紹介になりますが、批評論、すなわち作品をどのような切り口で整理すればいいのか、はある程度メディアを問わず使えると思います。(ただ、作品媒体の特徴に着目するメディア論については、その名の通り映画なら映画に翻訳する必要があると思いますが)
3. 廣野由美子『批評理論入門』中央公論新社
こちらはAmazonでベストセラー的におススメされたので読んでみた本。
内容としては1と2のハイブリッドという感じで、名著『フランケンシュタイン』を対象に様々な批評論を用いて解体していきます。前半では『フランケンシュタイン』のあらすじが示されると同時に、小説が書かれるにあたってのテクニックが紹介され、後半では様々な批評論を紹介しながら、その批評論を用いて実際に『フランケンシュタイン』を読み解いていきます。
とにかく強いのはこの後半部分で、理論をどのように応用して読んでいくかが実際的に示されており、紹介される13の批評論それぞれを用いて作品を批評していきます。1つの作品でもこんなに切り口があるのかと驚きます。
1つの作品をじっくりしっかり読み下していく本書は、内容がグッと詰まっており、1,2に比べると多少読みにくい(しかし決して難解ではない)かもしれませんが、その網羅的な内容は何度読み返しても良いと思います。
番外編 『Filmmaker's Eyeシリーズ』
批評論は歴史的な背景もあり、文学批評が主になります。文学批評論も物語の読み方や着眼点という部分では参考になるのですが、映画について批評したいとなると、加えて映像の読み方が必要になるわけです。
この本はカメラの勉強用に買っていたのですが、映画によくみられる構図を紹介しながら、その構図がもたらす効果について、様々な名画を引用しつつ丁寧に説明されており、映像表現の読み方がよく分かります。なんなら3DCGとか絵にも役に立つ。
劇スはとにかく「画」の力が強いなあと思いながら見ているのですが、なんとなくこのシーンの構図はこの効果を狙っているのかも……?などと考えて遊んでいます。
まとめ(というかオチ)
以上の本を読んだからといって、じゃあスラスラ文章が書けたかと言えば、全然書けませんでした……。
というか批評対象としての劇スは結構ハードモードじゃないですか。あらすじがあるようでないようで、様々なモチーフやオマージュにあふれ、キリンの言うことはわかるようでわからない。そもそもワイルドスクリーンバロックってなんなんだ……。
色々考えまくって、書き溜めていた感想メモを見返し、さらには劇ス自体を何度も見返して(ちょうど3月にチネチッタで上映してくれていてものすごい助かった)何とか感想文もどきを書き上げることになりました。
出来はともかく、気に入った作品をわりときちんと言語化するということが出来て楽しかったし、いい経験になりました。私の文章はさておき、劇ス卒論合同自体は参加者も多いらしく、これだけ考察を集めた本はないと思うので素直に楽しみです。
今後ここまで見まくる作品があるかわかりませんが、これからも感想は書いていきたいですね。
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