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青春

部屋にあるものを、整理している。いわゆる断捨離っていうやつだ。
元々断捨離は得意な方なのだけれど、これまで何度かやってきた中でもどうしても捨てられないものがあった。高校の時から大好きなアイドルのDVDやらライブグッズだ。

私はアイドルが苦手だった。整った顔立ちで、キラキラした衣装をまとい、歌やダンスで人々を魅了していくその姿はなんだか近寄りがたく、できるだけ距離を取って人生を送ってきた。

そんな私があるアイドルグループを好きになったのは、15歳の頃だった。
決して正統派とは言えず、肩書はアイドルだというのに必死で笑いを取りに来る。キラキラとした、と言うよりも、もっと人間臭くて、がむしゃらな彼らの姿にいつの間にか虜にされていた。

初めてライブに行った時は、興奮と同時にとてつもない距離を感じた。あぁ、彼らはやはりアイドルなのだと、芸能人なのだと突きつけられて、わけもわからず寂しさと悔しさを覚えた。
新曲やアルバムの情報が出るとすぐCDショップへ予約をしに行き、新しいライブの知らせがあると必ずチケットの抽選に応募した。当選の通知が来ると、友人と一緒に馬鹿みたいに喜んでいたものだ。

1年、3年、5年、10年と、振り返ってみると自分でも驚くくらい沢山の時間を費やした。これが終わればDVDを買いに行くぞ、と試験を頑張る口実にしたり、お金を貯めてライブに行くんだ、とせっせとバイトに励んだこともある。会社員を辞めて夢を追うべきか迷っていた時は、ライブで聞いた歌に背中を押してもらったこともある。
私の青春には、いつも彼らがいたのだ。人は大げさだと馬鹿にするかもしれないけれど。

何年か前、私が追いかけていたメンバーが自身の夢を追うために脱退をした。
その時のショックといったら言葉にできず、聞くたびに元気をもらっていた彼らの音楽がたちまち涙を誘う音楽と変化した。
友人たちからは「あの人、グループ辞めちゃうんだね」と慰めの言葉やメールが来るようになった。

寂しいし、嫌だし、大好きだし、辛い。とてつもなく辛かったのだ。でも、その何倍も何十倍も、ありがとうと思った。こんなに何かに夢中になった人生を送れたのは、間違いなく彼らがいたからだ。そんな素敵で、何にも代えられない時間をくれた彼らに、本当に感謝したい。

私は今でも彼らが大好きだ。新曲も聞くし、ライブにも行く。それはきっと、これからも変わらないだろう。
部屋の整理をしていて、いくつかCDやDVDを手放すことにした。受け取るものはもう十分すぎるくらい受け取ったと思ったからだ。
そしてこれからも増えていくであろう彼らの品々を受け入れるスペースも、確保しておかなくてはならない。

願わくば、私の青春を支えてくれた品々が、本当に彼らを大好きな他の誰かの手に巡っていきますように。

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