見出し画像

政党の類似性?基本政策が一致しないことにはね・・・。

はじめに

第50回衆議院議員選挙が終わり、もうすぐ2週間ですね。この間、テレビを中心とするマスメディアでは「やれ、政権交代だ!やれ、野党連立だ!やれ、部分連合だ!」という類の見出しが連日踊ってますね。同時に、国民民主党含め野党の党首に「首班氏名では野田佳彦と書きます!」と言わせたいのか、チグハグな会見問答が繰り返されていますね。そもそも各政党の基本政策が一致してないのに、政権交代のためだけに、野党で連立してどうするのでしょうか。政権交代の先には何があるのでしょうか。
書き出しが長くなってしまいましたが、今回は各党の政策への態度をもとに政党の類似性を分析してみます。つまり、どの政党が類似しているのを明らかにする、そんな試みです。

 政党の類似性

今回使用するデータは選挙ドットコムの「政党を選んで政策を比較しよう!」のデータをお借りします。各政党が26個の政策に関して「反対から賛成」の5件法で回答したアンケートデータです。質問は下記の通りです。

政策活動費は廃止するべきだ
大企業に対する課税を強化するべきだ
日本の防衛費を増額するべきだ
高齢者の医療費の自己負担の割合を増やすべきだ
子育て支援に関わる財源は、社会保険料に上乗せして対応するべきだ
原子力発電所を増設するべきだ
高校の授業料を無償化するべきだ
憲法9条に自衛隊の存在を明記するべきだ
同性婚を法律で認めるべきだ
防災庁を設立するべきだ
消費税を10%から引き下げるべきですか?
企業・団体献金を禁止すべきですか?
原子力発電所の再稼働を進めるべきですか?
選択的夫婦別姓を導入すべきですか?
保険証や運転免許証をマイナンバーカードへ統合すべきですか?
日銀の物価目標を現在の2%から引き下げるべきですか?
日米地位協定を見直すべきですか?
政府機関や本社機能を地方に分散すべきですか?
公的年金を積立方式に移行すべきですか?
税金や保険料の負担が発生する「年収の壁」を撤廃すべきですか?
防衛費増額に伴う増税を行うべきですか?
被選挙権年齢を18歳に引き下げるべきですか?
少子化対策と高齢者福祉を比較した場合、少子化対策に財源を優先して配分すべきですか?
炭素税を導入すべきですか?
農家の所得を補償する制度を導入すべきですか?
ライドシェアを全面解禁すべきですか?

選挙ドットコム「政党を選んで政策を比較しよう!」

ここでは、各政党の回答データに対して「反対: 1」「やや反対: 2」「中立: 3」「やや賛成: 4」「賛成: 5」とエンコードして順序尺度として扱います。

政党の政策への態度抜粋

少し細かい話ですが、ここでは、スピアマンの相関係数を持つ距離行列を多次元尺度構成法(MDS)の計算に利用しています。ポリコリック相関係数を利用する方法も試みたのですが、結果がそこまで変化しなかったので、採用していません。MDSの簡単な例として、日本の主要都市の緯度経度のデータをもとにMDSの結果を可視化したものです。小難しいところはさておき、多次元のデータから距離をうまい具合に計算して可視化できるものです。しっかり理解したいという人には「関連性データの解析法―多次元尺度構成法とクラスター分析法―」がオススメです。

さて、MDSで分析した結果を可視化したものがこちらです。

MDS Plot

国民民主党からみて、わかりやすいようにロゴをプロットしています。点が近いほど政策への態度が類似している、つまり、政党が類似していることになります。ここでの類似度とは、「政党の最も大切な政策への態度」を軸とした類似性です。各党のおもしろ政治家さんのキャラクター性で類似と言っているわけではないです。

国民民主党の目線であれば、日本維新の会は26個の政策について、細かい部分ではズレがあるかもしれませんが、方向性としては同じ向きを向けそうです。つまり、日本維新の会の目線から見ても同じです。各回答をエンコードしているので、国民民主党と日本維新の会の回答の差の絶対値を合計すると18でした(Q1で|5-4|=1, Q2で|2-4|=2のような感じです)。

参政党については、あまり知らなかったのですが、国民民主党と類似している結果となりました。「そうなんだ」と思いながら、各政策を比較して見てみましたが、2024年11月8日時点ではすごく重要な論点でズレているので、現時点では仲良くするのは難しそうです。

さて、立憲民主党(The Constitutional Democratic Party of Japan, CDP)はどうでしょうか。そもそも、立憲民主党と国民民主党は民主党、民進党を源流としており、保守、リベラル分断後のリベラルな方が立憲民主党、残りの保守の人たち希望の党、国民民主党みたいな流れがあり、さらにこのあたりで立憲民主党とごっちゃとなって今に至る感じなので、「そもそも感」が強いわけです。

さきほどの図を再掲しています。案の定、政策の類似性には距離があります。国民民主党と立憲民主党は基本的に政策の方向性は合わなそうです。どちらかというと、立憲民主党は社民党、日本共産党、れいわ新選組と類似しています。維新の会とも類似してません。

再掲

ちなみに、国民民主党と立憲民主党の回答の差の絶対値を合計すると38でした。国民民主党と日本維新の会の合計は18でした。

おわりに

国民民主党と政策が類似しているは日本維新の会でした。そもそも論ではありますが、国民民主党、日本維新の会と立憲民主党は政策の方向性が違うので、連立して政権交代しても、政権交代の先には何があるのでしょうか。

分析についても触れておきます。この分析には限界があります。5件法のデータをMDSの計算に使用することの是非は人によっては大きく分かれそうですし、政策への態度は、大きな方向性としては同じではあるが、部分的には不一致などがあると思います。また、「賛成」と「やや賛成」の間にはどれくらいの距離があるのか、それは政党間で等距離なのか、このあたりも問題があります。これらの部分は、選挙ドットコムさんでは、コメントを付記することで有権者への有益な情報提供をされていますが、本分析では文章を数値化して利用できていません。

あとがき

マスメディアのTVや新聞を中心に、取材内容とは異なる見出しや記事を書いて、SNSで政治家本人からファクトチェックされて、訂正を指摘されるのどうにかならないのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?