【カンボジアニュース】不動産不況で不良債権がさらに増加:銀行6.8%、マイクロファイナンス8.3%
カンボジア国立銀行は、7月19日に2024年上半期の業績と下半期の計画に関する半期総括会議を開催しました。
開会の挨拶においてチア・スレイ総裁は、2024年上半期の不良債権率は銀行で6.8%、マイクロファイナンスでは8.3%へと増加したことを明らかにしました。また、銀行による貸付の伸びは2.6%と過去20年間で最低のレベルとなっています。これらの要因を受けて、カンボジアの銀行及びマイクロファイナンスの収益性は急速に悪化しています。
いわゆる日本のバブルにおいては、株価や地価が下落し、保有資産を売却しても返済ができない債務者が増加するようになりました。銀行は貸し付けたお金を回収できず不良債権を抱え融資を渋るようになり、融資が受けられずに倒産する企業が増加。消費も低迷し、さらに企業収益が悪化するという悪循環を引き起こし、「デフレスパイラル」の入り口となり、バブル崩壊後に長期間にわたって大きな爪痕を残す結果になったと言われています。
国立銀行の発表では、カンボジア経済全体については概ね好調であるとされており、上半期のGDP成長率は6.3%、2024年全体では6.0%と予測されています。縫製業17.2%、観光業21.2%など主力産業が好調であり、輸出が経済を牽引しているとの表現がなされていますが、メディアでは実体経済との乖離も懸念されています。
クメールタイムスの8月12日付記事によると、政府の経済予測と企業や国民が経験する現実とは乖離があり、それはいくつかの要因から生じているとしています。統計において把握されている公式経済と同等、あるいはそれ以上の規模の非公式経済が存在するのもその要因の1つです。記事の結論としては、カンボジア政府の経済予測は、公式経済データへの依存、非公式経済活動の把握の難しさ、現地の経済状況と完全には一致しない可能性のある外部要因の組み合わせにより、現地の現実と比較すると過度に楽観的であるように見えるかもしれないとしています。
クメールタイムス8月12日付記事
Reading into tea leaves on Cambodia’s actual economic performance
統計では前年度比21.2%の成長で経済を牽引しているはずの観光業ですが、数字と異なり回復はまだ道半ばと言えます。最近では汚損したドル札の受け取りを義務付ける政策が首相から出されるなど、観光の回復に向けて様々な試みがなされているところです。また、中央銀行でもコロナ禍で大打撃を受けた観光業に対し、特別な融資対策がなされてきました。
一方で、中国等からの不動産投資が激減していることから、楽観的な政府統計においても建設業や不動産業は停滞していると表現されています。これらの業種を中心に生じている不良債権の急増について、中央銀行は現時点で銀行の健全性に問題は無いとしつつ、今後も適切な銀行監督を行っていくとしています。
日本のように急激な為替変動に苦しんでいる国もある中で、変動率が1%程度に抑えられるなど、中央銀行の手腕は評価するところです。また、外貨準備も200億ドルと充分なレベルにあるとしています。不動産バブルに適切な対処を行いつつ、今後もカンボジア経済が順調に発展するよう、当局の慎重な舵取りが求められています。
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