
スピードが命のRAW現像
●潜像と現像
RAW現像の本質は、画像を自分のイメージ通りにレタッチすることではなく、デモザイクエンジンの種類を適切に選ぶことでRAWの持つ”潜像データ”を最大限に”現像データ”に変換させるということである。そのことは以前にも「RAWで撮るということの本筋とは」にて書いた。
ちなみに、”潜像”と”現像”は元々フィルム用語であり、光の当たったフィルム上の目に見えない像を”潜像”、薬液処理によって目に見える像に変えることを”現像”と言う。だから、デジタルカメラの時代においては、RAWデータが"潜像"に、そしてデモザイク処理が"現像"に相当する。
●時間のかかるRAW現像
ボクの過去の実績を見てみると、撮影を主目的として出かける際、撮影対象にもよるが1日に大体300~400枚くらい撮っているようだ。この枚数が一般的にみて多いほうか少ないほうかは分からないが、フィルム時代を振り返ると36枚撮りフィルム10本くらいと考えると割と普通かと思う。
しかしながらフィルム現像の場合(リバーサルの場合)、現像をカメラ店に依頼して戻ってきたものをルーペチェックしていき、失敗カットはハサミで切って捨ててしまう。そして残った物が成功カットとして残る。実に簡単。

一方、デジタルでの現像であるRAW現像の場合、フィルムでは失敗とされるものでも後処理で救済できるため、個別の調整作業が発生してしまうのである。これにはまとまった時間を必要とするので、忙しい時は当面必要なカットだけは現像した後、残りのデータは後回しになってしまい、そのままずっと未現像で放置してしまうこともある。
RAW現像で時間がかかるのは、大量にある枚数の1枚1枚に手をかけているのが原因である。これは現像の本質から外れている行為と言わざるを得ない。
RAW現像は、デモザイクを行い潜像を現像化するためであり、レタッチはまた別の付加行為でしかない。であるならば、レタッチは現像時に行う必要は無い。現像後に改めて必要なカットだけをレタッチソフトで加工すれば済むことだ。
●ボクのRAW現像作業プロセス
とにかく、現像は撮影したらその日のうちに終わらせるのを徹底させることにした。こうしないと、次の撮影にはさらに未現像のデータが積み上がって手に負えなくなる。
そこでボクは、RAW現像のために下記の作業プロセスを実施している。
①撮影時のカメラのホワイトバランスは固定
RAWデータではホワイトバランスの設定は関係無いとは思うが、いちおう念のために「デイライト」に固定している。もしJEPG撮影する際にホワイトバランスをオートにしておくと、カットごとにホワイトバランスが微妙に変わってしまい、同じ撮影シーンで一括処理を適用できなくなるからだ。
②カメラごとのプロファイルを適用
カメラを複数機使っているとすると、同じメーカー製でも機種が異なると癖が異なる。現像ソフトでは撮影カメラ・レンズ情報を読み取って最適化するのだが、複数機使っているユーザーの視点としては、同じ撮影環境で撮った写真の色合いや調子を揃えることを重要視するもの。
そこで、機種ごとの違いを補正するために機種それぞれのプロファイルを作っておくと便利である。もし機種ごとにデモザイクエンジンを変えたいのであれば、プロファイルにセットしておけばいい。そしてRAWデータをカメラの機種でフィルタリングし、全選択して一気にプロファイルを適用すれば良いのだ。
③色調整はシーンごと一括
同条件で撮影した写真では、色調整は最初の1枚にだけ行えば、それ以外のカットは同じ条件を一括して適用させれば済む。
屋外での撮影では建物などの陰に入ると青空の色が被って色温度が下がってしまうが、日向のシーンと陰のシーンと分けてそれぞれ一括処理すれば良い。要するに、色合いは1枚1枚調整する必要は無い。
④明るさ・トーン調整
フィルム時代では、撮影時の露出調整を誤ればそれは失敗であった。ところがデジタルの時代では、明るさの調整が撮影後でも可能となった。いやむしろ、イメージセンサーのラチチュードがかなり狭いので上級機種では後調整を前提としたハイライト基準測光であることが多く(ハイライトが飛ぶと救済できないので)、露出不足となることが前提となっている。そうやって得られたRAWデータを、情報量を保ったまま現像化するのは重要である。
これはRAW現像の本質であるから、時間をかけるならばこのプロセスしかない。しかしながら、サムネイル上で同じような濃度に見えるカットを複数選択して一括処理するなどすれば、多少は効率が上がるだろう。
以上の作業を以て、後は現像実行にてPCの処理速度に依存する。最近のPCの処理能力であればそれほど時間もかからないだろう。6,000万画素のRAWデータが300枚くらいあっても、3世代くらい前のCore-i7プロセッサで5~10分ほどか。コーヒーでも飲みながらYouTubu1本観ていれば終わってしまう。