私は小学校で先生をしている。
今年で3年目、日々あたふたしながら
その日暮らしでなんとか乗り切っている。
(本当はよくない、ちゃんと準備します。)

今年は初めて1年生の担任になった。
彼らはすごい。ほんとにすごい。
大人にはない可能性を秘めに秘めまくっている。

と、いうのも日々

「あれ、君誰?昨日とおんなじ子?まさか昨日教室の後ろの方で永遠に筆箱いじってて私の話全く聞いていなかったあの子?いやいやそんなことはないでしょう。」

というような成長を目の当たりにすることがザラにあるからだ。

ある日突然、
昨日まではできなかったランドセルの片付けができるようになっていたり、
昨日まで人見知りで話しかけても無言を貫いていた子が、
「先生おはよう!」と飛びついてきたり。
(気持ちは嬉しいよ、抱きしめ返したいよでも今の時代は、密です。)

とにかく毎日目が離せない。
そして毎日一緒にいると楽しい。
彼らの可能性を身近に感じ、
できた!を共に喜べる教師という仕事が
わたしは大好きだ。(辛い時もたくさんあるけどね。)


先週のこと。
国語の授業で、『て』の書き方を学習した。

『て』がつく言葉集めをしたり、
『て』のつく友達の名前をみんなで言ったりと
授業はかなり盛り上がった。
みんな一生懸命考えて
一生懸命手を挙げていた。
ちょっと前まで幼稚園や保育園に通っていたとは思えないくらい。
子どもの吸収力は計り知れず
毎日全力でこちらに向かってくる。

ひらがなの書き方はおそらく多くの学校が
似たような教え方をしている。(と、思う。)

1マスを4つの部屋に分け、
何番の部屋のどのあたりから一画目が始まるのか等を意識させ、
字形を整えて書けるように指導する。
わたしもそのように指導している。

この日学習する『て』は
かなり序盤に習う割には字形のバランスが難しく、漢字の『乙』のような字を書いてしまう子がかなり多い。
思えばわたしも子どもの頃はすごくすごく下手だった。(このコロナ休校中、ひらがなドリルを改めてやってみて、自分の癖字を実感して、鉛筆の持ち方と共に癖字矯正をしました。)


「先生、『て』ってなんだか横を向いてる人みたいだね。」

と教室の後ろの方から誰かが言った。

なるほど。人文字か。
よく逆上がりや二重跳びは『体で覚える』という。
そうか、ひらがなも文字通り
『体で覚える』方が分かりやすいのか!

「そうだね、横を向いて真っ直ぐ手を伸ばしてる人と似てるね。」
「でも、なんか曲がってるところがあるから…先生、お腹をポコって出してみて!」

…お腹をポコッ?

「こんな感じ?」
「そう!先生、『て』みたい!似てる!」

子どもたちから歓声が上がった。
そのときのわたしの姿がこちら。

「でも先生ちょっとお腹出過ぎかも。」
「もうちょっと引っ込めて!」
「なんかちょっと形が変じゃない?」

…やめて!先生のライフはもうゼロよ!
子どもは時に残酷だ。
悪気がないからこそ刺さる一言。
後ろで見てくれている支援員さんも苦笑いである。

「引っ込めるって…こう?」
「そう、そんな感じ!」
「先生上手!すごいすごい!」
1年生はみんな純粋で褒め上手。
少しのことをまるでノーベル賞を受賞した天才かのように褒めてくれる。

「みんないい?先生みたいにポッコリお腹はだめだよ。おへそがちょんって真ん中の線に触るんだよ。じゃあみんなで書いてみよう。」


この日は今までで1番
ひらがなの『お直し』が少なかった。
(わたしの授業では、字形のバランスが悪かったり、字が小さかったりすると、赤ペンで書いた手本をなぞる直しをしています。)


『体で覚える』すごい言葉だなぁ。
子どもの見えてる景色って不思議だなぁ。
少しでも彼らと近い目線で
同じ景色を見られたら…
そんな思いでわたしは明日も教壇に立つ。

この後2.3日は『て』のポーズがクラスで流行ってしまったことは言うまでもない。

どうか、どうか子どもたちが
先生のポッコリお腹の話をお家の人にしませんようにと祈る日々である。

#て #小学校の先生 #ひらがなの授業



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