キョリカン

最近の悩み
子どもとのキョリカン。

若い先生の部類に入るわたしは
なるべく子どもと同じ目線に立って
子どもと近いキョリで接していけるように
心掛けている。
それが今のわたしの武器だと思うから。

我がクラスには自分のことを
名前にくん付けで呼ぶ可愛い男の子がいる。
仮にAくんとしよう。

人見知りも激しく、はじめは全然キョリが縮まらなかった。
Aくんとよく関わるようになったのは
学校が本格的に始まってから2週間、給食開始の時からだ。

Aくんは好き嫌いが多い。
とても多い。
基本的に緑の野菜は食べないし
キノコ類はもってのほか。
一切口に入れようとしない。
家で食べたことのないものや
調理法が違うものはよく見て観察して

そして…
食べない。

だからAくんにとって給食の時間は
ある意味未知との遭遇の時間である。

わたしは先生だ。
先生にとって給食の時間は
食の指導という業務の時間である。(と、わたしは思っている。)
基本的にわたしも食べるのが遅く、
普通に味わって食べていたら子どもたちの指導ができない。
だから給食はとりあえず口に押し込んで飲み込む。栄養を摂取して子どもたちとの関わりの時間を1分でも長く取れるようにするのがわたしの今の課題である。


時を戻そう。

Aくんとわたしとのキョリは
給食の時間でぎゅっと近くなった。
というのも

絶対に嫌いな食べ物を食べたくないAくん
vs
一口でもいいから苦手に挑戦して欲しいわたし

のバトルが毎日繰り広げられているからである。
嫌いな食べ物があるのはわかる。
わたしも小学生の時、お肉が嫌いで全然食べることができなかった。
一口でもいい、挑戦する気持ちを持って欲しいという思いがある。

と、いってもこれはわたしの考えであって
Aくんはどう思っているのか分からない。
そこで、Aくんに聞いてみた。

「Aくんは、先生が苦手も一口は食べなって言うの嫌?」

すると、Aくん。

「Aくんはね、食べたことないものは嫌なんだよ。あとAくんきのこ嫌いだからさ。でも別に嫌じゃない。」

との返答。

そんなこと言っても全く食べないじゃん!
と思うところはあったが
どうやら嫌がられてはいないらしい。
少し安心した。
Aくん本人の気持ちと親御さんの少しでも食べて欲しいという思いが確認できたので
今も一口は食べよう作戦は続けている。

一口食べてもらうために口元に運ぶわたし
vs
口に入れられまいと口を固く結び避けるAくん
という構図は今も我がクラスの日常である。


が、最近になって気付いたことがある。
断固として口を開かないAくんの口角が上がっていることが増えたのだ。

彼はおそらく
わたしとのこの給食バトルを楽しんでいる。

思えば休み時間に話しかけてくれることも
自分の話をしてくれることも増えたように思う。

子どもの気持ちはどこで変わるのか分からない。
給食バトルはいつしかAくんとわたしの
キョリを詰めるために必要な時間になっていたのだ。

子どもとのキョリカン、難しいなぁ。
心のキョリが近い先生になれたらいいなぁ。
と思う。

休みが短いのは嫌だけど
夏休み明け、子どもたちに会うのは
すごく楽しみだな。

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