
小規模の利点
ワインは収穫した葡萄を醸造して作られる。生産工程が単純であるため、小規模なワイナリーであっても、優れた作品を作ることができる。であるならば、規模の小なることの利点を活かすことは、悪い発想ではない。
生産者がオーナーでもある小規模ワイナリーでは、作り手の意思を経営に反映しやすい。作りたいワイン、手掛けたい畑等、面白いアイディアをすぐ実行に移すことができる。さらに多くの人を雇用したり、大規模な生産設備を持っている訳でもないので、徒に生産量を拡大させる必要がないことから、小規模な栽培家とも協業しやすい。付け加えるならば、小規模農家には優れたものも少なくない。
特に、ピノ・ノワールのように、生産量が稼ぎにくく、丁寧な栽培が求められる品種を手掛ける場合には、小規模な生産者と農家の組み合わせが相性が良いように思う。オレゴン州のようにブルゴーニュ品種の生産に力を入れている地域では、そうした例を見つけやすい。
Goodfellow Family Cellarsは、ブルゴーニュ品種を中心に手掛けるワイナリーで、オレゴンの小規模で優れた畑と多く協業している。ワインのスタイルは、オレゴンの生産者達の中にあっても極めて繊細で、欧州伝統産地の洗練されたワインの向こうを張る品質と言って良い。なお、オーナーのMarcus Goodfellow氏は、WineBerserkers.comにもよく投稿しており、熱心な好事家とも積極的にコミュニケーションを取るなど、気さくな人柄で知られている。ワインの価格も極めて穏当だ。
過日、Durant vineyardのピノ・ノワールを入手することができたので、開けてみることにした。Dundee HillsにあるDurant Vineyardは、ピノ・ノワールやシャルドネで優れた果実を供給していることで知られる。
梅、紫蘇、野苺を中心とした香り。強い酸と細いボディの作りが洗練された印象を作り出している。しかし、果実味の芯がしっかりしているので、つまらないワインにはならない。アフターも美しく、オレゴンのピノ・ノワールの中でここまで洗練されたスタイルのワインは珍しい。欧州伝統産地のピノ・ノワールを好む好事家なら、一度は飲んでみる価値があるだろう。
Goodfellowでは、Durantの他にもWhistling Ridge, Temperance Hill, Ribbon Ridge, Fir Crestといった錚々たる畑からもワインを生産している。さらに、これらの畑の特定の区画を用いたワインを作ったり、実験的により高い品質を目指して仕込んだキュヴェをリリースしたりしている。こうした少量生産のワインを手掛けることができる点は、小規模生産者の強味だろう。ただ、それぞれの畑の個性を尊重しつつも、全体を通じてハウススタイルが貫かれていることが、優れた生産者であることを示している。
Marcus氏は、多くの好事家とコミュニケーションを取りながら、今後も小規模な栽培家と協業しつつ、自身が目指すスタイルのワインを作っていくのだろう。願わくば、地に足のついた身近なワイン生産者のまま、名声を博して欲しい。
本日のワイン:
Goodfellow Family Cellars Durant Dundee Hills Pinot Noir 2019
93+pts
https://goodfellowfamilycellars.com

